甘味肆

□優しい言葉(笠松)
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試合終了のブザー鳴った。

体育館全体が、歓声や拍手やらで沸き上がった。

コート内の選手は、力を使い果たしたように立ち尽くす。
桐皇学園には誰一人として、勝利を喜んだりする者はいなかった。
ピリピリとした緊張が溶けないまま、審判のかけ声と共に、両チームとも整列する。



終わった。

海常98

桐皇学園110

海常側のエース黄瀬の試合中の成長により、海常高校はあともう一歩の所までいった。
だが、いっただけだった。
その先には進めなかった。


なまえは持っていた対戦表の紙を落としてしまった。
観客席から見るコートは広くて、色んな人が動いているのがよく分かる。
でも、なまえの大切な人はコートの中にいない。


「っ!」

「なまえ、どこ行くの!?」

一緒に海常高校の応援に来ている友人に背を向け、なまえは観客席から走り去った。
残された友人は溜め息をつき、なまえの落とした対戦表の紙を拾う。
赤いペンで、それまで海常高校の試合の所に大きな丸が付いている。

「まぁ、仕方ないか・・・」

そう言うと、彼女も席を立ち上がり、なまえに先に帰るという連絡のメールを入れて体育館から去った。
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