甘味肆

□タダクニ君、まじ天使(タダクニ)
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彼女のお隣さんには、兄妹がいる。
惚れてしまうほど強い妹と、男性ホルモンどこいったな兄、タダクニである。
なまえとタダクニは中学校まで一緒だったので、高校が別々になった今も交流を続けていた。
そんなある日のお話である。



「何だよそれ・・・」

「君の友人のヒデノリ君とヨシタケ君が、私にくれました。」

「アイツ等いつの間にこんなもん撮ってたんだよ!?」

なまえがタダクニにおもむろに差し出したのは彼女の携帯だった。
タダクニが何も知らずに画面を覗き込むと、あらビックリ。
そこには女装姿(衣装Byタダクニ妹)のタダクニが映っているではないか。
確かにその女装は、タダクニが友人とふざけてやっていたものである。

「単刀直入に言おう。」

「ていうか消去しろよその画像。ねぇ、」

携帯を制服のポケットにしまい、神妙な面持ちでなまえは話を進める。
状況についていけないタダクニは、ただ取り残されるだけだ。
なまえの瞳の奥がキラリと輝きを増す。
格好いい効果音と共に突き出された人差し指は、タダクニに向けられていた。


「女より可愛いってドユコト!?」


「日常は日常でも、それ違う方の日常のネタなんですけど!?」

「黙れタダクニ子!」

「タダクニ子って誰!俺!?」

そうタダクニが返すと、なまえは照れるような仕草を見せる。
別にそのネーミングセンスを褒めているつもりはタダクニには一切無かった。

「ちなみにメールの文面は、“俺達のタダクニまじ天使”とあります。」

「天使じゃねぇよ!」

「問題はそこじゃない。見てここ。“俺たちの”ってあるでしょう?」

携帯に出されたメール画面。
タダクニはそれをまじまじと見つめる。
彼が全く分かっていないようなので、なまえは深くため息をついた。

「正しくは“私の”タダクニです。」

「はぁ!?」

「もっとよく言えば、私だけの天使タダクニです。」

「どっかのアニメのタイトルみたいに言うんじゃない!
ちょっと、止めろ、服を脱がそうとするな!」

じたばたと暴れるタダクニを後ろから羽交い絞めにして、彼女は彼の制服の中に自分の手を突っ込む。
ひやっとした感覚がタダクニの背筋を撫でた。
大人しくなったタダクニを見て、なまえは満足そうな笑みを浮かべる。

「タダクニって本当かわいいよね。」

「・・・ふ、普通こういうのってするの逆だろ?」

「だめだめ。タダクニは絶対に攻めにはなれません〜」

なまえは顔を真っ赤にしているタダクニのうなじにキスを落とす。
そのまま舌を少しだけ這わせて、彼の反応を楽しんだ。
涙目になっているけど、止めてなんかあげない。
他の男の前で可愛い姿を何も考えずにさらけ出してしまったタダクニにはきついお仕置きが必要だ。


「もう私以外の奴の前で、あんな可愛いかっこしちゃだめだよ」



 

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