甘味拾肆
□君の記憶
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ネオ・ディーバ本部
地球へと帰還したアマタ達を迎えたのはクレアを初めとする聖天使学園の面々だった。
容態が悪化したシュレードはすぐさま医療班の処置を受け、ゼシカとユノハもメディカルチェックへ回される。
ユノハが搭乗していたベクターマシンには彼女一人しかいなかった。
直前でアルテアへの出撃が決まったカオルは、ネオ・ディーバへ戻っていない。
彼女が今アルテアに残っているのは明確な事実である。
メディカルチェックを受けているユノハの代わりに、アマタがそれに答えた。
「次元ゲートに突入する直前に、攫われたらしいです。」
「攫われたって・・・あんな状況下で?」
ドナールが身を乗り出してアマタに尋ねる。
総司令不在の今、クレアの右腕となっていたのはカオルを初めとする教官陣だ。
スオミはカオルの安否が気になり、とても冷静に話せる状態ではないため、ゼシカとユノハの付き添いに行っている。
「いきなり花びらが現れて、カオル教官を連れ去ったって・・・」
「花びらということは、まさか・・・」
司令の椅子に座っているクレアの脳裏に過ぎったのは、あの男の姿だった。
ドナールも彼女と同じ事を考えていた。
きっと、カオルがあの男、トワノ・ミカゲに連れ去られたのには理由がある。
そしてその理由はある事実に基づいた物であることは確かだった。
クレアはアマタ達にカオルの出生を明かすことを決意した。
「このような形になってしまいましたが、皆さんには今ここで話すべきでしょう。ミス・カオルの過去を―――」
聖天使学園内 学生談話室
メディカルチェックを終えたゼシカやユノハもおり、エレメント達がそこに集っていた。
その場に居合わせていなかった二人のために、アマタがカオルの過去について説明する。
「じゃあ、カオル先生はアルテアの病から逃れるためにこっち(地球)に来ていたってこと?」
「多分。俺がイズモって人から聞いた話と合わせると、そうなる。」
アマタはゼシカの問いにそう答えた。
腕組みをして考えていたモロイも、顎に手を当てて自分の考えを述べる。
「次元ゲートを通るときに、記憶を無くしたのかもしれないな。」
「・・・ミコノさんは、まだ帰ってきていないの?」
「不動総司令を探しに行ったまま、まだ・・・」
サザンカの言葉がそこで途切れる。
彼女は、螺旋階段を下りてくる一人の人物に目を向けた。
「カイエン、シュレードの様子は?」
「ひとまず危機は脱したようだ。まだ絶対安静だがな。」
「不動総司令もカオル教官もいない、シュレードも力を使い果たして寝込んでいる!
もう駄目なんじゃないか!?ネオ・ディーバは!」
「簡単に諦めんな!」
ソファに座って俯いたままだったアンディが、強くモロイを叱咤する。
彼の瞳には、今までにない強さが込められていた。
「まだ終わっちゃいねぇ。体勢を立て直し、またアルテアに乗り込むんだ!
絶対に、MIXを救い出すんだ!」
アンディが勢いよく立ち上がる。
そのとき、心の動きに反応してアンディの穴掘力が勝手に発動してしまった。
床が崩れ落ち、咄嗟に手をかけたテーブルにも力が働いてアンディは前のめりに倒れる。
「アンディ、大丈夫!?」
「平気だ、こんくらい!
俺は絶対諦めねぇ。MIXを取り返すまで、何度でも何度でも食らいついてやるんだ!!」