甘味拾肆

□恋愛禁止令発動中
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聖天使学園 理事長室
ふかふかのソファに座り、ドーナツを頬張る美少女が一人。
彼女にお茶を出している司令が一人。
展開についていけないサイボーグ教官と修道服教官が一人。
腕に着いた腕章を恨めしく睨むオレンジつなぎの教官が一人。
窓の外を眺める総司令が一人。
なんともカオスな空間に近い。

「このお嬢さんが、理事長なんですか。」

「そうだ。クレア・ドロセラ理事長。
そしてあそこにいるのが不動・ZEN総司令。
お二人はアクエリオンの謎を解明するために世界を旅していらっしゃったのだ。」

「お戻りになったということは、何か分かったと言うことですか?
私は、禁断アクエリオンのことも何も知らされていなかったので・・・」

「ミス・スオミ。アポロンとシルフィの神話はご存じかしら?」

ティーカップから顔を上げたクレアは、そう尋ねながらチョコがかかったドーナツを投げた。
不動は瞬時に反応してドーナツをつかみ取る。

「・・・え、えぇ。もちろんですわ。
確か映画にもなったはずです。確か、“アクエリアの舞う空”。」

「そう。一万二千年前、堕天使族との戦いの末、愛し合うアポロンとシルフィは離れ離れになった。
激しすぎる想いは、時に破滅を招くこともある。
引き裂かれたアポロンとシルフィの互いに想い合う心が、現代に甦ったアクエリオンを暴走させる要因となっているのです。」

「暴走?」

「それ故に、ネオ・ディーバはアクエリオンの真の力を封印してきました。
あなた達はよくご存じよね?ミスター・ドナール、ミス・カオル。」

「嫌と言うほどね。」

ドナールの言葉に、カオルも首肯した。

「しかし敵が強力になっている現在、ネオ・ディーバも体制を改めることを余儀なくされています。」

「そう。私たちは、禁断の力に頼らざるを得ない。」

クレアの小さな手がスカートの裾を強く握る。
皺になっても構いはしない、それほど彼女の悔しさは強かった。
ドナールもサイボーグ化した手を見つめた。

「ドーナツのリングに囲まれし虚空。
自らの中心に居座れる虚空を全て喰らい尽くせ、ドナール・ダンテス。」

不動はドーナツの穴からドナールを覗く。
真意が分からない彼の行動に、カオルは眉をひそめた。
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