甘味

□八話
1ページ/9ページ

「現在、オーブに向けて、地球連合軍艦隊が進行中です。
地球軍に与し、共にプラントを討つ道を取らぬと言うならば、ザフト支援国とみなす。
それが理由です。」

「なんだそれは・・」
「理不尽すぎないか・・・」

その場にいるアークエンジェルのクルー数名が、不満を口にする。
マリューは、全アークエンジェルクルーを集めて話をしている。
同席しているカガリは、俯いたままだった。

「オーブ政府は、あくまで中立の立場を貫くとし、現在も外交努力を続行中です。
ですが、残念ながら、現状の地球軍の対応を見る限りにおいて、戦闘回避の可能性は非常に低いと言わざるを得ません。」

マリューは続ける。

「オーブは全国民に対し、都市部及び軍関係施設からの退避を命じています。
不測の事態に備えて防衛体制に入るとのことです。
我々もまた、道を選ばねばなりません!!」

ここからが、マリューが本当に伝えたいことだった。

「オーブのこの事態に際し、我々はどうすべきなのか。
命ずる者もなく、私もまた、あなた方に対しその権限を持っていません。」

マリューの言葉は、アークエンジェルクルーの想像を超えているものだった。

(マリューさんも、私と一緒だ。)

リディアは、マリューに自分の姿を重ねた。
でも、私は彼女ほど強く、まっすぐに皆に伝えられていたのだろうか。
そう思うと、リディアは少しだけ不安になった。

「回避不能となれば、明後日0900、戦闘は開始されます!
オーブを守るべく、これと戦うべきなのかそうではないのか・・・我々は皆、自信で判断せねばなりません。
よってこれを機に、艦を離れようと思う者は今より速やかに退艦し、オーブ政府の指示に従い避難してください。」

「退艦だって、」
「どうする?」
「このまま戦闘になったら」

アークエンジェルクルーは判断を迫られた。
今ここで艦を離れても、誰からも責められず安全を確保できる。
だが、このままで良いのだろうか。
属する者たちの命をあんな風に簡単に犠牲にできる地球軍をこのままにして良いのだろうか。

全ては個人の判断に委ねられた。



結果、退艦は十一名だった。
それにはリディアの友達であるカズイも含まれていた。

「そっか、降りるんだね。」

「うん・・・」

カズイは不安そうに、艦に残る仲間を見る。

「ごめんね。」

「謝る事じゃないよ、これは自分の判断なんだから。」

「ありがとう。」

そう言って、カズイは艦を去っていった。

「カズイには、怖い思いさせちゃったな・・・」

「リディア・・・」

「自分の仲間の筈なのに、本当は敵で、そんなの怖すぎるから。」

それを聞いたミリィがリディアの手を握る。

「変なことばっかり考えないの!」

「ミリィ・・・」

「今はオーブを守ることが大事だよ。」

「うん。」

リディアはミリィの手を握り返した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ