甘味
□六話
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「ストレッチャーで運べ!!」
「出血多量!輸血準備急げ!!」
「今は、パイロットの容態が最重要です!MSなんて、後でも事は足りるでしょう!?」
ガラガラとストレッチャーが動く音がする。
怒声が響き渡る。
「意識が回復したぞ!」
「喋っちゃ駄目!喉が潰れてるのよ!!!」
リディアが声を出そうとすると、喉に強烈な痛みが走った。
「頑張って、もう少しで助けられるから!」
でも、私は助かっても
ニコルは助からなかったでしょう?
次に目が覚めたのは、ザフトの病室だった。
一面が白い壁。
周りには、専用器具などが所狭しと並んでいる。
「お目覚めですね。」
声を出そうとして、看護婦さんに止められるリディア。
「私の話が聞けるか、リディア。
喉が潰れているそうだ。無理して喋らなくて良い。」
むくりと起き上がり、病室に入ってきたクルーゼに敬礼するリディア。
クルーゼは、リディアのベッド脇にあった椅子に腰掛け、リディアに向き合った。
こくんと縦に首を振るリディア。
「ニコル・アマルフィは死んだ。君の目の前で、な・・・」
ニコルの死に動揺しつつも、リディアは近くにあった紙に書く。
[分かっています。]
「そうか・・・
ブリッツは、跡形もなく消し飛んだ。
君の乗っていたアテナは、爆発の衝撃で重要な部分に支障を生じてしまった。また新しく、造るそうだ。」
[はい。]
「ここは、プラントの病院だ。」
クルーゼの言葉に驚くリディア。
「リディア、君には長期任務が終わったばかりなのに戦闘に参加させてしまった。
そして、今回のコレだ。
成り行きを知った国防委員長が、君に暫しの休暇を与えるそうだ。」
[はい。]
「久しぶりに、家に帰ってゆっくりすると良い。
もう出歩いても大丈夫と言われている。今日にでも君の家から迎えがやってくるだろう。
声が戻るまでゆっくり休み給え。」
[はい。]
「では、また追って連絡する。大事にな。」
[ありがとうございました。]
そう書くと、リディアは敬礼したままクルーゼを見送る。
扉が閉まった瞬間、リディアは目を閉じた。