甘味拾

□世界は今日も廻る
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「飛鳥井?今日は欠席だよ」


見滝原中学校三年生クラスが並んでいる廊下には、さやかとまどかがいた。
ふじのに会いに、彼女の教室にやって来たのだ。
しかし目当ての人物は見つからず、クラスメートに尋ねたところ先程の答えを返された。

「ねぇ、休みだよね?」

「朝のHRでふじのは休みって言われたよ。
委員長の仕事が大変だったみたいだし、それで体調崩したのかもね。」

ふじののクラスメートは、下級生であるまどかたちに色々教える。
学校には、風邪を引いて休むと連絡が来たこと。
巴マミが欠席なのも、ふじのの風邪が感染ったからではないかということ。

「もしかして、保健委員の子?」

「あ、いいえ。
ふじのちゃんは、小さい頃からお世話になっていて・・・今日は見てないから。」

「そっか。優しいね。」





「今でも魔法少女になりたいと思う?」

お昼休みの屋上には、まどかとさやかがいた。
さやかの問いにまどかは無言で返す。

「・・・なんて、そんな訳ないか仕方ないよ。」

ふぅ、とさやかはため息をついた。
キュゥべえは二人を見つめる。

「やっぱりふじのちゃんが、この街を魔女から守ってくれるのかな・・・」

さやかは目の前に佇むキュゥべえに尋ねた。

「そうなるだろうね。
ただ、ふじのは今まで表立ってこなかったし、ここは永らくマミの縄張りだった。
ふじのの存在を知らない他の魔法少女が、空席を狙ってすぐにでも魔女狩りに来るだろうね。
ふじのは、彼女たちとも戦うことになるだろう。」

「そんな・・・」

「グリーフシードを手に入れるためには仕方ないよ。」

さやかは複雑な表情を見せた。
さやかも、まどかと同じくふじのとは小さい頃からの付き合いである。
魔法少女の惨たらしい最期を、さやかはふじのに当てはめて想像してしまいそうになった。

「わたしね、マミさんとふじのちゃんに魔法少女になるって約束したの・・・」

まどかはポツリポツリと話し始める。
さやかはそれを静かに聞いていた。

「今さら虫が良すぎるって、ずるいって分かってるの、でも・・・」

まどかの頭の中に、マミの最期が映し出された。


「やっぱり無理・・・あんな死に方
怖いよ・・・嫌だよ・・・」


きっと全ての魔法少女の最期が、マミのようなものではないだろう。
しかし、いつでも死と隣合わせで残酷な運命を背負うことに変わりはない。
願いのために払わなければならない高い代価が、魔法少女の運命なのだ。

「そうか、わかった。
僕も無理強いは出来ない。僕の契約を必要としてる子を探しに行くとするよ。」

「ふじのちゃんはどうするの?」

「もちろん、ふじのの側にはいるよ。
でも、君たちがもう魔女に関わらないとすればここで君たちとはお別れだ。
短い間だったけど、楽しかったよ。ありがとう」

キュゥべえは、小さな体を翻して、ぴょんぴょんとどこかへ消えた。
何とも言えない後味だけが残る。

「ごめんね、キュゥべえ・・・」

まどかはキュゥべえが消えていった方を見て、悲しそうに言った。





放課後、まどかはマミの部屋に来ていた。
もしかしたらマミはここに居て、いつもみたいに迎えてくれるのではと期待した。
ドアノブに手をかけると、ガチャリと重い音がしてドアノブが動く。

「開いていたの?」

まどかは部屋の中に入る。
静かにドアを閉めると、中から足音が聞こえた。

「マミさん!」
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