甘味拾

□ギロチン刑に処す
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頭を押さえられた状態で空中に吊し上げられれば、人の身体はブラブラと揺れる。
腕はだらしなく垂れて、その様子から絶命していることは一目瞭然だった。
魔法少女の変身が解けて、見滝原中学校の制服姿に戻った少女は、首が千切れて音もなく落ちた。
実際には少しばかりの音はしただろうが、それよりも魔女が彼女の身体の肉に喰らいついた方が早かった。
グシュグシュと内蔵が潰れる音に、ボキボキと身体中の骨が砕ける音。


ふじのはこの景色を呆然と眺めていた。
膝から落ちることなく、ただ立ち尽くした。
この光景を忘れない。

巴マミが喰われている今の景色を忘れない


「あ、やだよ・・・」

マミを食い散らかした魔女は、ゆっくりとその頭をあげる。
血のついた口回りを血のついた真っ赤な舌で舐めてから、魔女はふじのの頭上で同じように口を開けた。

「逃げるんだ、ふじの!!」
「ふじのちゃん!!」

魔女がふじのを飲み込もうとした瞬間、魔女の動きが停止した。
緑色に輝く鎖が、ジャラジャラと大きな音をたてて魔女に絡み付いていた。
魔女は鎖から逃れようとするが、もがけばもがく程、鎖はきつくなっていく。
魔女が地面に倒れ込んだのを合図にしたかのように、ふじのは飛び上がる。
瞬間、二本の太くて大きな柱が現れた。

「マミを殺したアンタは、」

二本の柱の内、一本の上にふじのは着地する。
柱の間には巨大な刃が現れて、その真下には地面に倒れたまま動けない魔女がいる。
ふじのの手の中には、斧に代わって杖のようなものが握られていた。
ふじのは逃れようとバタバタ動いている魔女を見下ろす。
杖がゆっくりと挙げられた。


「ギロチン刑に処す」


ふじのは杖を降り下ろす。
直後、刃は猛スピードで落ちていき魔女の首を切り落とした。
断末魔が響き、間近で見ていたまどかとさやかは耳を塞ぐ。
首と胴体が別れた魔女は、しばらくのたうち回った後消滅した。
マミが死んだことで彼女の魔法から解放されたほむらは、その光景を陰から見ていた。

カラン、とグリーフシードが転がる。
それはほむらの足に当たって止まった。

「早く使いなさい、あなたのソウルジェムは黒くなりかけているはずよ。」

魔女が消滅したことで、魔女の結界も徐々に壊れていく。
ほむらは変身を解いたふじのからソウルジェムを無理矢理取り上げて浄化した。
黒い濁りに覆われる寸前だったソウルジェムは、本来のエメラルドグリーンの輝きを取り戻す。
ほむらがふじのを見れば、ふじのは静かに涙を流していた。

「これでよく分かったでしょう?」

ほむらはふじのにソウルジェムを返し、まどかとさやかに強く言い放つ。




魔法少女になるって
 こういうことなのよ










つづく
 

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