甘味拾

□もう何も恐くない
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まどかは全力で走っていた。
緊急事態であり、親友の身に危険が迫っているからである。
脚を必死に動かしていたら、ふじのに関する疑問はどこかに行ってしまい、一つの感覚だけが残る。

最初からふじのがいるのは必然なのだと



「ここです!」

まどかたち三人が走り着いたのは、大きな市立病院だった。
ふじのとマミは苦い表情を見せる。
まどかたちがグリーフシードを見つけた場所にはさやかとキュゥべえはいない。
魔女の結界に迷い込んだようだ。

「この病院、もしかして上条君が入院してるところ?」

ふじのがまどかに尋ねた。

「うん。お見舞いに来た帰りにグリーフシードを見つけたの。」

「キュゥべえ、聞こえる?」

マミはソウルジェムを取り出して結界の中にいるキュゥべえに話しかけた。
マミのソウルジェムはポワポワと光を放っており、それは魔女がいる証である。

[聞こえているよ]

マミの頭に響くのはキュゥべえの声。
マミのソウルジェムを通じて、テレパシーを使う。

「なんとか無事みたいね。」

[グリーフシードが孵化する寸前だ。なるべく静かに来てくれるかい?]

「分かったわ。」

[ふじのもいるなら心強いよ!]



そこでテレパシーを切ると、魔女の結界が現れた。
入ったら、魔女を倒すまで帰ってこれない。

「さぁ、行きましょう。」

マミが先頭となり、ふじのたちは結界へと足を踏み入れる。
結界の中は薄暗く、三人は真っ直ぐ続く廊下を進む。
廊下の両側には大小幾つもの扉が連なっており、隙間からは毒々しい色の魔女の使い魔が顔を覗かせた。

「隠れて!」

いち早く気付いたふじのがマミとまどかに隠れるように言う。
使い魔に見つかったら、魔法を使わずにはいられない。
グリーフシードを刺激することを避けたいマミとふじのは、隠れながら進むことを決めた。

「それにしても無茶したわね。」

マミは後ろにいるまどかに小さな声で話しかけた。
まどかがマミを呼びに行き、さやかがグリーフシードを監視する。
効率的だとは思うが、魔法少女ではない二人には危険すぎる。

「すみません・・・」

「でもさ、お陰で見失わなかったからよかったじゃん。
さやかたちも無事みたいだし。」

「そうね。
でも今回に限ってよ。鹿目さ・・・」

「マミ?」

マミは立ち止まると、後ろに振り返った。
マミの口からとある魔法少女の名前が発せられる。
ふじのとまどかもすぐに振り返った。
後ろにいたのは、既に変身していた暁美ほむらだった。

「ほむらちゃん・・・」

「今回の獲物は私が狩る。
もちろん、結界内の二人の安全は保証するわ。」

「信用できると思って?」

マミはその場にしゃがみ、床に手をつく。
そこからはマミのソウルジェムと同じ色の光が瞬き、直後ほむらの体にマミの魔法が絡み付いた。
魔法少女に変身せずとも使えるリボンの魔法で、マミはほむらを拘束した。
二人が初めて会ったとき、ほむらはマミの“友人”であるキュゥべえを攻撃していた。
言わずもがな、こんな状況下で信用できる間柄ではない。

「怪我をさせるつもりはないけれど、あんまり暴れると保証はしかねるわ。」

「待ちなさい!」

「行きましょう二人とも。」

「待って・・・今回の敵は、今までとは違うのよ!?」

身動きの取れないほむらをそのままにして、三人は奥へと急ぐ。
まだ完全にほむらを信用していないふじのは何も言わない。
まどかは戸惑ったようにほむらに向き直るが、二人と同じく前に進んだ。
離れていくまどかの背中を見つめて、ほむらは苦虫を噛み潰したように言った。


行っては駄目よ

「だって、この魔女は・・・」
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