甘味拾

□隠し通すと
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「はぁ・・・」

ふじのは自分の部屋のベッドの上で仰向けに転がっていた。
エメラルドグリーンのふじののソウルジェムは、澄んだ色に輝いている。
最近は使い魔や魔女と戦っていないからだ。
見滝原はマミの管轄内だったからだ。
マミはふじのよりも先に魔法少女となっている。

【魔法少女の縄張り争いなんて、日常茶飯事だよ。】

契約したときのキュゥべえのその言葉はよく覚えている。
そして、そのときに聞いた親友の名前。
ふじのは、マミと縄張り争いなんてことをしたくなかった。
故に、魔法少女になったマミとはなるべく接触しないように心がけている。
魔女退治も、ひっそりと行っていた。

「言うべきなのかなぁ」

でも今更

「そんなこと、どう切り出せって言うのさ・・・」


コンコン

「ふじの、入るわよ?」

ドア越しの母親の声に、ふじのは体を起こした。
母親は片手に電話の子機を持っている。

「まどかちゃんがまだ帰ってきていないみたいなの。何か知ってる?」

「まどかが?」

ふじのは放課後のことを思い出した。
マミとさやかと一緒にいた。
それまでならいいのだが、ふじのは昼間のキュゥべえとの会話も思い出していた。

「わからないけど、友だちと遊んでるんじゃないかな?」

「そうね・・・鹿目さん、うちの娘も知らないみたいです。」

母親は電話の相手に向かって言った。
その後、部屋を出る際には小声で「宿題終わらせたの?」と尋ねられた。
鞄を開けば、明日の予習が入っていたことを思い出した。





翌日

「おはようマミ」

「おはようふじの。委員長の仕事は大丈夫?」

ふじのが教室に入ると、マミは顔をすっとあげた。
彼女の手の指輪が光る。
ふじのは胸の前でぐっと手を握った。

「あのね、マミ・・・」

「何?」

マミはいつも通りにふじのに接する。
マミの顔を見て、急に言葉に詰まった。

「ふじの?」

「あ、衛生週間についての仕事だいたい終わったんだ!
だから昨日はごめんね、約束急に破っちゃって・・・」

アハハ、と乾いた笑いでごまかすふじの。
結局、また言うことは出来ない。
マミは首をかしげたが、それ以上何かを聞くことはなかった。

(私の、臆病者!!)

結局あのまま始業の鐘が鳴って言うことなど出来やしなかった。
授業中も、ノートを取りながら小さくため息をつく。
タイミングがこんなにも大事なものだったなんて、初めて思い知らされた。



「何かあったの?」

「へ?」

「だって、今朝からふじのの様子がおかしいんだもの。」

昼休み。
マミとふじのは向かい合って座ってお弁当を広げていた。
マミは一人暮らしだが、お弁当はとても美味しそうだ。
マミはおかずの卵焼きをパクッと口に含んだ。

「マミ・・・」

「何かあったら言ってほしいわ。
ふじのは、私の大切な親友なんだもの・・・」

マミはニコリと微笑む。

「あ、今日の放課後は空いてる?」

「ごめんね・・・予定入っちゃってるわ。」

「そっか。」

「でも、また一緒に遊びに行きましょ。」

「うん!」
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