00長編

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「GN粒子最大散布!」

伊織はそれほど射撃が得意ではない。
なので、遠距離になられては困るのだ。
素早く動く新型と、なるべく近接戦闘にもちこもうとする。

「っ!」

とっさにGNフィールドを展開したが少し遅かった。
背後に回ってきたMSに、思いっきり攻撃を浴びせられる。

ピピピピッ

甲高い警報音が鳴る。
コックピットを凄まじい衝撃が襲っていた。

「ぐぅっ!!」

その時、伊織がとっさに振ったビームサーベルがMSの脚部を貫いた。
攻撃が一旦止まり、その隙を見逃さずにそこから後退する。

「今の内に!」

伊織がヴァーチェの方を見ると、ヴァーチェが敵MS隊に拘束されている。

「ティエリア!」

『こちらへ来るな、こいつらは僕が撃つ!』

だが、伊織は粒子タンクが塞がれているのを見た。
あれでは反撃することもできない。

「今行く!」

ジークレンがヴァーチェの援護に向かおうとしたとき、四方からMS編隊が現れた。
特殊な拘束マグネットに気づいたときには既に遅く、ジークレンの動きが封じられる。

ズキッ

「痛っ!」

ジークレンのGN粒子を散布しようとするが、射出口が封じられてしまった。
更に、無理にハンドルを動かそうとすると手首の辺りに激痛が走る。
痛みに気を取られてしまい、周りを見ることが出来なくなった。

「ティエリア!!」

ヴァーチェに新型MSの刃が振り下ろされようとしていた。


『ナドレ!!』


「何、あれ・・・」

斬られると思った瞬間、ヴァーチェの装甲が全て外れた。
一体何だと思い、全ての注目がヴァーチェに集まる。
装甲の下からは、伊織も見たことのない機体が現れた。

「ガンダムなの?」

ピピッ

モニターにその機体の名前が映る。

『ガンダムナドレ、目標を消滅させる!』

その瞬間、ナドレが装備していたバズーカからすさまじい規模の砲弾が放たれた。
辺りにいた敵MS隊が粒子ビームに飲み込まれる。

「何よ、あれ・・・」

伊織はただ呆然と見ているしかなかった。
そこからの敵の行動は迅速だった。
おそらくナドレの攻撃力をかいま見て、部隊が全滅する前に撤退命令が出たのだろう。
ジークレンを拘束していたMSがどんどん去っていく。


「ティエリア!!」

手首の痛みを気にせず、伊織はナドレに近づいた。
ヴァーチェとは全く違う機体だった。

「ティエリア、ティエリア!」

『伊織・・・
なんて事だ、ヴェーダの計画を歪めてしまった・・・こんな早期にナドレを敵に見せてしまうなんて!』

「ティエリア・・・」

『俺は・・・僕は・・・私は・・・!』

ジークレンのコックピット内に、ティエリアが泣いている声が響く。
こういうときはどうすればいいのか伊織は困ったが、とりあえず報告しなくてはならない。

「スメラギさんに連絡・・・って、トレミーはオービタルリングだっけ。」

どうする術もない。
伊織はジークレンでナドレのハッチを開けた。
ティエリアは放心状態のようで、伊織がジークレンから降りても反応を見せない。

「ティエリア、大丈夫?」

「・・・」

「ティエリア・・・」

この機体を見せたのがよっぽどショックだったのだろう。
ティエリアをどうしたらいいのかわからない。
泣いていたので、伊織はホームで小さい子をあやしていたのを思い出した。

「大丈夫だよ、私がいる。」

伊織はそう言ってティエリアをぎゅっと抱きしめた。
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