移行済・甘味拾
□その無力で嘆かわしい運命を憎む
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初めから分かっていたんでしょう
暁美ほむらが紡ぎ出したその言葉に、キュゥべぇは尻尾を振るだけだった。
感情を持つこと自体が重篤な精神病と判断される彼らに表情というものはない。
赤い双眼が見つめる先にあるのは、地球という星を破壊しかけている魔女だった。
「悪趣味」
精一杯の嫌みをぶつけるが、それがこの生物には何の意味も持たないことは痛いほど分かっている。
ほむらは、遠い地平線で渦巻く魔女の姿を見た。
最早、一人間、一魔法少女の力の及ぶ存在ではなくなっている。
鹿目まどかは“飛鳥井ふじやの救済”を望み、その願いは“全生命の存在の消滅”というところに行き着いた、
キュゥべぇによれば、この魔女はあと十日ほどで地球を滅ぼすらしい。
「ま、後は君たち人類の問題だ。
エネルギー回収ノルマは、無事に達成できたわけだしね」
キュゥべぇはほむらにそう告げた。
ほむらはそれを聞いても、激昂したりしない。
眉一つ動かさずに「そう」とだけ答えた。
それ以上は何も言わないで、黙ってそこから立ち上がる。
ここからが、またスタート地点となる。
「戦わないのかい?」
「いいえ、私の戦場はここじゃない」
「暁美ほむら、君は―――」
そうして彼女は時間を何度も繰り返す。
ただ、大切な人達を絶望の未来から救い出すために。
それだけのために、彼女は運命の砂時計をひっくり返すのだ。
「次こそは、絶対に貴方たちを救ってみせる」
fin