移行済・甘味拾

□時間よ廻れ
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誰も、未来を信じない

誰も、未来を受け止めない

だったら、私は

もう、誰にも頼らない

誰に分かってもらう必要もない

もう、まどかには戦わせない

もう、ふじや君を絶望させない

全ての魔女は、私一人で片付ける

そして今度こそ

ワルプルギスの夜を、この手で!





その時間軸で、ほむらはたった一人で戦い続けた。
まどかの持つ潜在能力に目をつけたキュゥべえをその都度消した。
また、ふじやが魔法少女と関わりを持たないように常に配慮した。
巴マミという存在は障害となったが、それでもほむらは彼に勧告し続けた。
守られるだけのか弱い暁美ほむらは、この世界には居ない。


「彼女一人では荷が重かった。
でも君なら、君ならこの運命を変えられるよ!」


ワルプルギスの夜に立ち向かうほむらの目に映ったのは、キュゥべえと鹿目まどか、飛鳥井ふじや。
ほむらが叫んでも、その声は二人に届かない。
ほむらを見つけたキュゥべえだけは、彼女の努力を嘲笑う。



「まどかじゃなければ、ダメなのか?
俺は力を持つことは出来ないのか?」

男として、年上として、黙ってみていることは出来ない。
ふじやが自らそう進言すると、キュゥべえは白い大きな尻尾を左右に振った。

「ふじや君?」

「君は男の子だけど・・・僕が見えているし、君からは彼女と同じくらいの潜在能力を感じるよ。
でも、魔法少女になれるのは少女だけだ。」

「なら俺が“魔法少女になりたい”と願ったら?」

ふじやの言葉に、キュゥべえは表情は変わらないが驚きを見せた。
願いを叶える代償としての魔法少女の運命。
ならば、魔法少女となることを願ったらどうなるのだろうか。
キュゥべえですら、その結果は予測できない。

「僕にも分からないけど、賭けてみるかい?」

「ふじや君・・・いいの?」

「いいんだ。
この世界の結末を変えることが出来るなら、魔法少女としてずっと戦ってやる」



「止めて」

エメラルドグリーンの光が、彼らを包み込むのがほむらには見えた。
ピンク色の光じゃない。
あれは何なんだ、と問う前から答えは分かっていた。

「ふじや君!!!」







「いやぁ、凄かったねぇ」

全てが破壊し尽くされたその場所で、ほむらとキュゥべえは居た。
ほむらは瓦礫に腰かけ、魔女となったまどかを見つめていた。

「魔法少女となったふじやはワルプルギスの夜を倒した。
更にまどかが魔女となった彼を一撃で倒した!
エネルギーに換算すれば、太陽をもう一つ作れるほどさ!」

「それを見越して、二人と契約したのね」

ほむらの長い黒髪が、強い風に吹かれてなびく。
ほむらはもう泣いていない。
ただ淡々と、キュゥべえから事実を聞き出すだけだ。

「遅かれ早かれ、結果は同じだよ。
ふじやがあんな願い事をしたのは、確かにイレギュラーだったけど。
彼は最強の魔法少女となって、最悪の魔女となり、そしてそれをまどかが打ち破った。
まどかが最悪の魔女となるのは必然事項だった。」

キュゥべえは貴重なデータが取れたことに満足しているらしい。
インキュベーターの中でも、少年と契約を結んだのはキュゥべえだけだ。

「ま、後は君たち人類の問題だ。
エネルギー回収ノルマは、無事に達成できたわけだしね」

魔女となったまどかは、十日もすれば地球を滅ぼすだろう。
キュゥべえはほむらにそう教えた。
ほむらは「そう」と返すと、その場から立ち上がってキュゥべえに背を向ける。

「戦わないのかい?」

「いいえ、私の戦場はここじゃない」

「暁美ほむら、君は―――」










繰り返す

私は何度でも繰り返す

同じ時間を何度も巡り

たった一つの出口を探す

あなたを、あなたたちを

絶望の運命から救い出す道を

大切な、私の友だち

彼らのためなら、私は
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