移行済・甘味拾

□時間よ廻れ
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その日、飛鳥井ふじやは養護教諭に頼まれた荷物を保健室まで運んでいた。
よりにもよって休み時間にさせるとは、少し人使いが荒い気がするのは気のせいではない。
だが、六時間目は調理実習だから気持ちを大きく持とうと思う。
ふじやが教室棟から保健室に続く大きな廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。

「飛鳥井さん!」

「え?」

現れたのは、知らない女子生徒だった。
黒くて長い髪の毛を三つ編みにしていて、赤い眼鏡をかけている女の子。
ふじやは、三年生でも話題になっていた例の転校生かもしれないと考える。
しかし何故、彼女は自分の名前を知っているのか?

「私、魔法少女になったんです!
今度は私が飛鳥井さんを守りますから!」

年下の女の子からの“守ってあげる”宣言に、ふじやはただこう言うしかなかった。

「えっと・・・よろしくお願いします」

「はい!」



放課後

「時間停止能力ねぇ・・・」

線路の下にある空き地に、巴マミ、鹿目まどか、飛鳥井ふじや、暁美ほむらが居た。
ほむらは地べたにハンカチを敷いて座り込み、残りの三人はボコボコになっているドラム缶を見る。
キュゥべえはふじやの肩の上に乗っかって一緒に見ていた。
ほむらが魔法少女であるということで、今後の戦い方の参考にするために能力を見せてもらったのだ。
マミはドラム缶を見て、ほうとため息をつく。
正直、あまり戦力にはならなそうだ。
ほむらもマミの言いたいことを察したのか下を向く。

「でも、使い方によってはマミやまどかよりも強力かもしれない。」

ふじやはほむらに言う。
ほむらはふじやの言葉に嬉しさを感じつつも、今のままでは駄目だというのを思い知らされた。

「頑張ります・・・」





「ほむらちゃん、本当に凄かったんだよ!
大活躍してくれたんだよ!」

ある日の巴マミの部屋でのティータイム。
ケーキが刺さったフォークを片手に、まどかが興奮ぎみにふじやに話した。
先日の魔女狩りで、ほむらが魔女を倒したのである。

「分かったから、少し落ち着けって。
ほら、リボンも曲がっているから動かないで。」

ふじやは熱く語るまどかに横に向くように言い、曲がっている彼女のリボンを直す。
小さな頃から同じことをしているから、慣れた手つきであった。

「ふじや君、ちゃんと聞いてる?」

「実は、マミから既に聞いています。
暁美さんが本当によく頑張ってくれたってね。」

ふじやが笑いかけると、ほむらはほんのり顔を赤くしてカップの紅茶を飲み干した。
マミは微笑ましい風景に満足したように笑う。

「これなら、ワルプルギスの夜も心強いわ」





見滝原市は壊滅した。
巨大な竜巻に、観測史上最大量の雨。
全て、具現化したワルプルギスの夜が起こした超災害であった。
瓦礫が散乱しているここは、雨が溜まって海のようになっている。
大きな瓦礫に、二人の中学生の遺体がもたれかかっていた。
巴マミと飛鳥井ふじやであった。

「うぅ、あっああ・・・!」

ほむらは変身が解けてしまったまどかに駆け寄る。
まどかは苦しそうに呻き声をあげていた。
彼女の手の中にあるソウルジェムは、真っ黒になっている。

「どうしたの!?ねぇ、鹿目さん、」

パキン、と何かが砕ける音がほむらの耳に届く。
それはまどかのソウルジェムが砕けた音で、割れた中からは真っ黒な煙が立ち上った。
地面が揺れる。
むくむくと大きくなっていく煙からは、叫び声が聞こえてくるようだった。



「どうして、こんな・・・!」



伝えなきゃ、伝えなくちゃ!
みんな、巴マミも鹿目まどかも
違う、魔法少女はみんな


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