甘味拾

□転がり落ちる
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ねぇ、どうしてなの?
こんなの理不尽じゃないの?
私が今までずっと恭介と一緒にいたのに。
だって、仁美なんて恭介が入院していたときにお見舞いにも来なかった。
それなのにどうしてそうなるの?


【私、ずっと前から上条恭介くんのことをお慕いしていましたのよ】


ズルいよ。
私が仁美に勝てるわけないじゃん。
だって私は仁美みたいに、美人でもなければ勉強だって得意じゃないしおしとやかでもない。
あぁ、どうしてあのとき仁美を助けちゃったんだろう。
あのまま死んでくれたら、恭介は・・・
このままじゃ、仁美に恭介を取られちゃうよ。
でも私には何にも出来ない。
人間じゃないんだもん。
抱き締めてなんて言えない、キスしてなんて言えない―――






「おいアンタ、さやかを探しているんだろう?」

電柱の上に当たり前みたいに人が座っている。
ふじのは驚きつつも、声の主が誰か分かって平常心を取り戻した。
赤い魔法少女、杏子がアイスキャンディー片手に電柱に座っている。
ふじのが頷くと、杏子は飛び降りてきた。

「こっちだよ、付いてきな。」

アイスキャンディーの棒をくわえたまま、杏子は歩き出す。
ふじのは言われた通りに杏子の後ろに付いていった。

「アイツは今、魔女と戦っている。」

「前回みたいに邪魔しないの?」

「今日の相手は魔女だ。無駄な狩りじゃないさ・・・」

鉄塔が立ち並ぶ工場内。
その一角に、扉がうねりを描いている場所があった。
魔女の結界であるということが一目でわかった。

「チッ、アイツ手こずってやがんな・・・」

「ねぇ、聞いていいかな?」

ふじのが声をかけると、杏子は棒を口から出して振り返った。

「何だ?」

「どうして、さやかのことをそんなに気にかけてくれるの?」

ふむ、と杏子は考える仕草を見せた後に答えを出した。
初めて会ったあの日、さやかと杏子は殺し合いをするほどに仲が険悪だったはず。
相手が気になり始めたのは杏子からだった。

「アイツさ・・・昔のアタシにすごく似てるんだよね。他人を救うんだって、意気込んでいるところとか。
それに、同じ魔法少女って境遇もあるしな・・・」

それだけ言うと、杏子は口を閉ざした。
ふじのは杏子の横顔を見て、それ以上追及することを止めた。

「教えてくれてありがとう。えっと・・・」

「佐倉杏子。アンタは?」

「飛鳥井ふじの。」

そう返して、ふじのはソウルジェムを握りしめて魔法少女に変身した。
魔女の結界への入り口が広がる。
ふじのは自身の武器である斧を振り、魔女への道を切り開いた。



「はぁぁああああああ!!」

ザシュザシュザシュッ

さやかの剣が魔女を守る使い魔たちを切り裂く。
さやかを囲うように円形に現れた剣が、勢いよく飛んでいった。
しかし、祈りを捧げている魔女には届かない。

「さやかちゃん!」

さやかと魔女退治に来ていたまどかが声をあげる。

「っ!」

くねくねと動く使い魔が、先端を鋭く光らせてさやかに迫る。
あともう少しで串刺しになる寸前で、さやかを守るように斧が飛んできた。
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