甘味拾

□新しい魔法少女
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ふじのは暗くなった道を歩いていた。
電灯が点いた道を、物思いにふけりながら歩く。
何を考えているかと言えば、それはさやかのことだった。

【私、自分から望んで魔法少女になったよ】

魔女の反応を頼りに辿り着いた倉庫で見つけたのは、水色に輝くソウルジェムを持ったさやかだった。
昨日、さやかがふじのに言ったことは嘘ではないだろう。
さやかは真っ直ぐにふじのを見つめていた。
魔法少女同士のいざこざを恐れ、願い事の内容故にいつまでも悩んでいる自分とは違う。

「今から会いに行くのは、無理か・・・迷惑だよね」

持っていた携帯で、現在時刻を確認する。
ふじのの家からさやかの家までは遠い距離ではないが、この時間帯から行くのはさやかの家の人に迷惑がかかる。
明日、学校でさやかと会おう。
そう決めてふじのが歩いていると、前から見知った二人が歩いてきた。

「「ふじのちゃん!」」

「まどか、さやか・・・」

やって来たのは、制服姿のまどかとさやかだった。
さやかの肩にはマスコットさながらにキュゥべえが乗っており、手の上では彼女のソウルジェムが光っている。
ふじのはソウルジェムの光り方を見て、自身のソウルジェムも取り出した。
エメラルドグリーンのソウルジェムは、ポワポワと魔女に反応して光っている。

「もう暗いけど、もしかしなくても魔女探しのパトロール?」

ふじのが尋ねると、まどかとさやかは頷いた。
そっか、とふじのが言うと、さやかは思いついたようにふじのに言った。

「ふじのちゃん、もし大丈夫なら一緒に来てもらえないかな?」

「私なんかでいいの?」

「少しだけ、怖かったりするんだ・・・」

アハハ、とさやかが乾いた笑いをこぼす。
ふじのはさやかとまどかの手を取った。
びっくりしているまどかとさやかに、ふじのは笑顔を見せる。

「三人一緒なら怖くない、でしょ?」

“先輩”という単語が思い浮かんだ。
二人と魔女退治をしていたマミも、今の自分と同じ気持ちだったのかなと考える。
一方、心強い“先輩”の参加に、まどかとさやかは顔を見合わせる。
一人よりも二人は頼もしかったが、やはり心細い気持ちがあったのだ。
こうして三人はソウルジェムの光を辿って魔女を探す。
まどかの「お母さんに連絡しなくて平気?」という言葉で思い出したふじのは、携帯で簡単なメールを送った。
すぐ返ってきたのでよかった。




「ふじの、さやか」

さやかの肩に乗っているキュゥべえが二人に言う。
人気のない路地裏に三人は来ていた。
一見何もないように見えるが、さやかがソウルジェムをかざすと魔女の結界の入り口が現れた。
中に入っていくと、まるで海外の住宅地に入ったみたいだった。
建物と建物の間にはロープがかけてあり、不自然に洗濯物が舞う。

「結界が不安定だ。これは使い魔だね。」

「楽に越したことないよ、初心者なんだし。」

さやかがソウルジェムを強く握りしめ、魔法少女に変身する。
建物の間からはミニカーに乗った魔女の使い魔がエンジンを吹かせてやって来た。

「くらえっ!」

さやかは剣を振り、使い魔に斬撃を浴びせようとする。
しかし、使い魔に当たる寸前で見えない何かに攻撃が弾かれた。


「ちょっとちょっとー、何やってんのさアンタ達」


高い声と、コツコツと言う足音。
暗くて見えない場所からやって来た彼女の姿が少しずつ見えてくる。

「あれ使い魔だよ?グリーフシード持ってるわけないじゃん?」

さやかの攻撃を弾いたのも、やって来た彼女だった。
鮮やかな長い赤い髪の毛をポニーテールにした魔法少女は、片手にたい焼きを、もう片方には槍を携えて静かに歩いてくる。

「魔法少女?」

「やっぱり来たね、杏子」

杏子と呼ばれた赤い魔法少女は、さやかに槍を向けた。
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