+夢+

□君は何故愛を告げた
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私ね、私わたし、昔は学園に在籍していたんです。
忍術学園にです。
ええ、とても楽しかった覚えがあります。
とても、とても楽しかった覚えがあります。
同輩達と机に向かって勉学に励みました。
同輩達と広大な森を駆け回りました。
私は皆より要領が悪かったので迷惑をかけてしまいましたが、
周りは笑顔で接してくれました。
嬉しかったです。楽しかったです。


……すみません、最近頭痛が酷いんです。


はい、もう大丈夫です。
ご心配をかけてしまい、申し訳無いです。

私には同室の友が居ました。
お節介で、まるで私の兄の様でした。母の様でした。
私は勿論友に懐いていました。
いつも隣に居ました。
幸せでした。この幸せがずっと続けば良いと思っていました。

けれどもその幸せはある日儚く崩れました。
この記憶だけ鮮明に覚えているのです。
私たちは四年生になりました。
一部の同輩達は様々な諸事情で学園から去ってはいましたが、とても賑やかでした。
夜、いきなり友に押し倒されました。
友の目はまるで月の無い夜の色でした。
友は言いました。
「お前が悪いんだ」と。
私は友に悪事を働いた覚えはありませんでした。
けれど無意識に友を不愉快にしていたのかもしれません。
私は謝りました。何度も何度も謝りました。
しかし友の目はますます鋭くなるばかりでした。
初めてでした。
友のこの様な表情を見たのは初めてでした。
怖かったんです。とても怖くて、がたがたと体が震えました。
友は何かを呟きました。
私の耳には届きませんでしたが、
早くこの状態から開放されたい一心で、頷きました。
友の顔がパッと明るくなり、いつも私に向ける笑顔に戻りました。
それでも私の体の震えは止まりませんでした。

友の手には笑顔と不釣合いな苦無が握られていました。
その苦無を私の首にピタリと当てた友は美しい笑顔を浮かべていたのです。



聞いてくれて有難う御座いました。
え、その友の名前?
…… 君です。






留三郎君です。


食満留三郎君です。





留三郎君と同級生なんですか?
なら私ともですね。
立花仙蔵、君…。
すみません、覚えがありません。
い組、ですか?
私、は組以外の人と喋ったことが無いんです。

留三郎君と友達、ですよね?
なら、あの時留三郎君は何と言ったのか聞いてくれませんか。
私の言葉はもう留三郎君に届かないんです。




堕胎し嬰児の睡夢
留三郎君の気持ち→

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