テニス村

□赤く染める月
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嗚呼、この世界はなんて広いのだろう。


それに比べて俺はどうだ。
ちっぽけで宇宙から見たらクズ以下だ。


でもテニスでなら
テニスでならナンバーワンになれるかもしれない
俺の実力なら
だから全国ナンバーワンの立海大付属中テニス部に入るんだ


少しでも、存在を大きく―――










現実は、甘くなかった。


テニス部には三人の化物が居た。


「(俺が、こんなにも無惨に負けるなんて)」


悔しい
やっぱり俺はちっぽけな存在でしかなかった


ほら、月が見てる


あんな大口叩いといて無様だね、って言われてるみたいで


「うるせぇ、バーカ」

「誰に言ってるんじゃ?」

「!!?」


びっくりした。人が居ると思わなかったから
だって此処は夜の学校
誰もこないと思ったから残ってたのに


「泣いてるのか?健気だのぅ…」

「泣いてないっ…」


俺、こいつ知ってる
テニス部の先輩だ…


「アンタも…馬鹿にしにきたんスか」

「も、ってなんぜよ」

「月に…馬鹿にされたから」


俺…なんでこいつにこんな事話してんだろ
どうせ馬鹿にされるに決まってるのに


「凄いの、お前は」

「は…?」

「テニスでナンバーワンになりたいんじゃろ?」


そう言って俺の頭をぽん、と撫でた


「夢を持てる赤也は、偉い」

「名前…」

「名前くらい知っとるぜよ。期待のルーキー切原赤也…有名だからな」

「きたい…」


期待されてるんだ、俺
まだ希望持っても良いのかな


「もう馬鹿にされないような男になる」

「月にか?」

「俺が…ナンバーワンになってあの月を赤く染めるんだ」

「フ…頑張りんしゃい」


また俺の頭を撫でて笑った




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