テニス村
□赤く染める月
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―一年後
「二年レギュラー、切原赤也」
この日、俺は晴れてレギュラーになった
他にも、幸村先輩は部長になり、真田先輩は副部長になった。
「レギュラー入りおめでとう!」
「丸井先輩。お互い様ッス」
「二年でレギュラーなんて凄いのぅ」
「仁王先輩…」
あの日以来、あんまり喋る事は少なかったが
「ま、レギュラーおめでとう…ナリ」
「……先輩もおめでとうッス」
何故か、嬉しかった
俺にとってあの日の事はとても大切な日だから
「仁王先輩、今日一緒に帰って良いッスか?」
「…良いぜよ」
「じゃあ早く支度しちゃいましょうっ!」
嬉しくて思わず跳び跳ねた
帰り道、辺りは少し暗くなっていた
「赤也が俺を誘うなんて、珍しいの」
「そっスか?」
「あぁ」
「俺…先輩にお礼言いたくて」
「礼?」
仁王先輩の言葉に、はい…と続ける。
「去年の今頃の事覚えてますか?」
「赤也が泣いてた日の事か?」
「…泣いてなかったッス!!恥ずかしいなぁ…じゃなくて!あの日俺に仁王先輩が声を掛けてくれてなかったら俺、諦めてたッスから」
だから
「ありがとうございました」
お礼を言うんだ
「俺は礼を言われる程なんもしとらんよ。赤也の頑張りじゃきに」
空を見上げると、もう月が出ていた
「赤い…」
今日の月は赤く輝いていた
「本当ぜよ」
赤く染まった月は、おめでとう
と言っているようだった
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