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□くろまめ。
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年明けも近づくこの忙しい時期。
ルキアは朽木家の正月料理の準備を手伝っていた。
最初は使用人の者にお手を汚させるわけには、と断られたがどうしてもとルキアが強引に台所に入り、今に至る。

(恋次のやつ・・驚くだろうな)

あの赤毛の幼馴染の驚いた顔を想像してはにかむ。
料理などしない自分が恋次の元へおせち料理を作っていけば、昨日の

『てめーは料理作れねぇだろ』

という子馬鹿な笑いも吹き飛ぶだろう。
これでギャフンと言わせるのは容易のはず。

「ルキア様。これで完了です」

「ありがとう」

小さな重箱に二人分のおせち料理を詰めてもらい、その出来栄えに目を輝かせた。
手伝ったとはいえ、少しは自分も手を加えたのだ。
まぁいいとしよう。

(見てろよ?恋次!)

ルキアのガッツポーズを見て使用人が首をかしげたのは、本人には気づいていない。





「あ?」

「何を呆けている。ほれ」

恋次に手渡された風呂敷。
恋次はその風呂敷を受け取り、中身を空ければ小さな重箱。

「明けましておめでとう」

フフン、と勝ち誇ったような顔で恋次を見るルキアに、まさか。とある考えを持って重箱のふたを開けた。

「うお。すげーな」

「すごいだろう!私が作ったのだぞ!ありがたく食え!」

作った・・というのは大げさで手伝った、だがこの際作ったと言ってしまえば恋次の頭は上がらないだろう。

「どうだ!何か言ってみろ!これでも私は不器用料理下手か?」

恋次は一緒に入っていた箸を持ち、黒豆を一口食べる。

「どうだ?うまいか?」

ルキアの問いかけに応えず、次は栗きんとんに手をつけ、またしばらく黙り、他の物を一通り食べてまた黒豆に手をつけた。
そしてずっと、ちまちまと黒豆ばかり食べる。

「な、なんで黒豆ばかり食べるのだ」

他のも食べぬか、とせかすルキアに恋次はニヤリと笑う。

「この黒豆だけまじぃ。お前これだけ作ったろ」

「な、なっ」

そう。
一番簡単な黒豆しか手伝わせてもらえず、しかも調味料の配分を間違えてしまったのを気づかずに完成させてしまったのだ。

「何故わかったのだ」

「だってよ・・これだけ他の高級料理亭並のうまさとかけ離れてまずじぃし・・」

「・・まずいしなんだ」

恋次は箸で黒豆を掴んでルキアの顔の横に並べた。

「お前、黒豆に似てるしなんとなく」

ニヤリと笑う恋次に一瞬呆けるが、すかさず赤髪の頭をどついた。

「いって!」

「黒豆とは何だ!この駄犬!!」

「駄犬?!あぁ?!てめーこそ!そっくりだろーが!この黒豆!!」



そして新しい年もこの二人の小さな小さな喧嘩から始まる。









嘘だよ。
まずいとか。
否、まずかったけど。
なんつーか。
まずいけどうまかった。

お前が作ったからだろうな。ルキア。


明けましておめでとう。

今年もよろしくな?



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