DRAGON QUEST 5

□死闘の行方
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「全力でぶっつぶす……ですか。ホホホホホホホ、威勢のいいお嬢ちゃんだ。」

『ふん、その歪みまくった性格正してあげますよ!!』

結衣達の足元で漂う黒煙と白い霧。徐々に交じり合い舞い上がっていくそれらは、対極する2人を表しているようだった。

堂々とゲマに向かい立つ結衣を見て、はっとしたのか。
アベルとヘンリーが立ち上がり彼女の元へと駆け寄った。

「結衣!!よかった……!僕、結衣が死んじゃったのかもって思って……っ!」

「オレなんか息も止まったぞ!オレが死んだらどーしてくれんだ!」

『おおっとう!?心配かけてごめんね、2人とも。さっきの攻撃は強い防御呪文かけてたから傷ひとつないからだいじょうぶ!(服はこげたけど…)』

駆け寄るなり結衣に抱きつき、傷はないかくまなく見るアベルと、逆ギレちっくな心配をしてくれたヘンリーに苦笑いをする結衣。
本当に、自分が心配されるのがもったいないくらいのいい子達だ。


すると、その時。


「アベル!結衣!ヘンリー王子!!」

「!お父さんだ!」

『……!パパスさんしゃがんで下さいっ!吹っ飛べ!イオナズンッッ!』


数匹の魔物と戦いながらこちらへと走ってくるパパス。
状況をいち早く察知した結衣は素早く詠唱し呪文で魔物の群れを吹っ飛ばした。
爆発系の呪文にしたのは、爆発後の煙でゲマから狙いを定められないようするためでもある。

結衣達は、素早くパパスの元へと駆け寄ると戦闘態勢を構えた。
この煙が晴れればまたあの魔物との戦いが待っているのだから。
結衣は少しでも戦いが楽になるように補助系呪文の詠唱を唱え始めた。

「ほぉ……お前はパパスですね…。流浪の王がこんな所にいようとは。」

「お前はゲマ……といったな…。その邪悪な気…何者だ!」

「そんな事、教える義理はありませんよ。それに知ったところで意味はない……ここが貴方の墓場となるのですから!!ーーージャミ!ゴンズ!」

ゲマはニヤリと笑い手をかざした。すると、紫の煙が立ち上がり二体の魔物が現れた。
その影は黒く巨大。きっとさぞ強く恐ろしい相手なのだろう……。
皆、武器を持つ手に力を込め見据えた。


「…お呼びでございますか。」

「何でも言うとおりに致します、ゲマ様。」


「「「『……………。』」」」






(((馬とカバ?……弱そーーー……。)))






「「お゛お゛お゛いぃぃぃ!!心の声駄々漏れだてめぇらあぁぁぁああ!!」」


突っこむ馬とカバ……いや、ジャミとゴンズは初登場から涙目である。



「ホホホホホ!まぁ貴方達の力を存分に発揮して思い知らせてあげなさい……?少々痛い思いをするかもしれませんがね…。」



ゲマの手のひらに炎の玉が宿る。

運命の戦いは今ーーー始まった。





■□






『スクルト!ピオリム!フバーハ!バイキルト!』

「ありがと、結衣!てやああぁぁあああ!」

何重も、何重も。補助呪文をかけて防御と攻撃力をあげていく。
本当ならゲマに何度も攻撃呪文をぶっ放したいところだが、明らかにマホカンタをかけている事が分かる為、無闇に攻撃呪文は出せないからだ。

『(でもね………)』

「このくそガキがああぁぁぁあぁ!」

ジャミが巨体を振り回し、武器を結衣に大きく振りかざした。
結衣は焦ることなくクスッと笑うと両手をバンッと地に着け、呪文を唱えた。

『アンタ達には攻撃できるんですよ!閃熱大炎!メゾラゴン!』

メラゾーマとベキラゴンを合わせた炎系最強呪文。
ジャミの体が勢い良く燃え盛る。ジャミの絶叫までもが炎の中に消えてゆく。

「……ほぉ…?」

それを見てなんだかゲマが不気味に微笑んでいるが、今はそんな事を気にしていられない。
まだジャミは生きているのだ。

(まずは、コイツだけでも私がなんとかしないと!)

『凍てつく塵となりなさい!氷刃嵐舞……マヒアロスッッ!!』

次に唱えたのはマヒャドとバキクロスを合わせた留めの一発。
木っ端微塵……とまではいかなかったが、無数の深い傷を負ったジャミは白目を向いて力なく倒れた。


ぱちぱちぱちぱちーー


数メートル先から聞こえてきた拍手音。今の状況では耳障りにしか聞こえない音の方向に、結衣は重く振り向いた。
視線の先にいたのは、不気味に微笑むゲマ。


「ジャミをいとも簡単に倒すなんて……やりますねぇ……お嬢ちゃん。
その高呪文を使いこなすとは、なんて素晴らしい魔力でしょう!」

まるで新しいおもちゃを見つけたかのように嬉しそうだ。
上から下まで舐めるように見つめられ、身震いしそうになるのをこらえ、結衣はキッと前を見据えた。


『ふん、さっきから観戦体勢楽しんでますが
そろそろ本気だしたほうがいいんじゃないですか?』

「……惜しいです……殺すにはあまりにも惜しい……。」

『………?』


会話が成立しないゲマの呟きに疑問をおいつつも、警戒態勢をとかず構える。油断なんかして背後から狙われちゃ元も子もない。

すると、ゲマはニヤリと笑い。




「お嬢ちゃん……


    

   ………こちら側に着く気はありませんか?」




『………

     ……はああぁぁぁあ!!??』



いきなり勧誘をされた結衣は、あまりの驚きに口をあんぐり開けてしまった。
顔がぶさいくになっただとかそんなもん気にならない。

『嫌に決まってんでしょうが!何言ってんだアンタ!!』

「おや?返事が早いですね、ホホホホホホホホホホホ!」
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