FINALFANTSY6

□黎明の空
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曇天の空に浮かぶ褐色の月。
少し湿った空気が肌を撫でる。
パチパチと燃え上がる焚き火の炎と赤い月があたしの血を巡らせているようだった。


『……いよいよだな。長い道を歩いてきた。』


静かにそう呟くと、隣で胡座をかいていたロックがあたしを見て微笑んだ。
盗賊である彼は厚いターバンを巻き長いローブを身に纏っていた。


「……ああ。まさか、町で他人から金を盗んで生活してただけの俺が、魔王を倒す旅に出るなんて……人生分からないもんだな。」

『この旅も、明日で終わる……。
あの城に巣食う魔王を倒して、囚われた姫を救う。
世界に平和を取り戻すんだ。』

「姫は…確かアユミの妹だったな。」


首にかけてあるロケットの蓋を開ける。
描かれていたのは、あたしと幸せそうに微笑む妹、ティナの姿だった。

『突然魔王が城に攻めてきた時……あたしとティナは大臣達に連れられ地下に逃げ込んだ。
だけど、その場所も魔物の部下達に直ぐに見付かって……ティナは……あたしを庇い1人で魔王の下へ…。』


「アユミ……。」

ロケットを握りしめる手が震える。
あの時、今のような力があったなら守りきれたのに。あたしが、力が足りなかったばっかりにティナを魔王に囚われられてしまった……!


「お、なーにしてんだ?俺が薪取ってくる間に暗くなんなよな。」

『マッシュ……。』


銀色に輝く鎧を纏った彼はマッシュ。
追手の魔物達から逃げている途中、偶然出会い助けてくれたのがマッシュだった。
出会った時は、只の腕っぷしの強い青年だったが、旅を続けていくうちに彼は魔王を倒す唯一の希望の光ー勇者だったことが判明したのだ。


『ただ、後悔してただけだ……。
過去の自分の愚かさを。』

「過去を振り返っても、時間が戻ることはない。
俺達は……未来の希望を切り開くだけだ。」

「流石勇者様だ、決めてくれるね。」

『冷やかすな、ロック。
……ま、アンタみたいなコソ泥よりかは遥かに人間できてるよ。』

「上等だコラアァァァ!剣を抜けぇぇ!!」

「まぁまぁ、二人とも。
今戦ったら休息した意味が無くなるだろ?
それに、ロックは城の罠に関してはすごく役立ってくれる筈だし、今いなくなられたら困るんだよな!」

「え、俺負ける前提?」

『とーぜんだろ。』


マッシュの天然発言にショックを受けるロックを見て、宥めるマッシュとその光景に笑うあたし。
きっと、落ち込むあたしを見てロックが気遣って、マッシュもそれに乗ってくれたんだろう。
ロックの不器用な優しさと、マッシュの揺るぎない強さにあたしはいつも支えられている。


『もうすぐ……夜明けだね。』

「魔王の力によって、城は闇に呑まれたまま……、太陽の光は何年もみていないけどな。」


魔王が現れてから、この城を中心とした大陸一帯には朝が来なくなった。
魔法時計で時間は分かるが、暗いままでは空気も澱んだふうに感じる。
すると、あたし達の横にいたマッシュが立ち上がり空をみた。


「俺は……空が見たい。
こんな鈍色の空じゃなくってさ…綺麗な青とお天道様の光でいっぱいの空だ。
勇者っていう肩書きついちまったけど…俺の目的は旅を始めた時と何ひとつ変わってねぇよ。」


曇天の空を真っ直ぐ見つめるマッシュの姿は、どこまでも強く折れない一筋の光のようだった。
城を覆っている闇を消し去り救ってくれる勇者ーー昔、じい様に聞かされた時は「そんなもん、あたしがなってやる!」と思っていたけど。
揺るぎない強さと優しさで敵に立ち向かうマッシュには敵わないと思った。


『絶対勝って……一緒に空を見よう。みんなで。』

「ああ!いい加減、この空の色には飽きてきた所だったんだ。」


焚き火の炎がだんだん小さくなっていく。
あたしとロックは 立ち上がり、空を見続けているマッシュの下へと歩く。


「闇に覆われた世界から光を取り戻す。行くぜ!」

「『おうよ!』」



ゴトンッ



あたし達が歩きだしたのと同時に、最後の焚き火の薪が落ちた音がした。


目指すは城、魔王と囚われの姫のもとへ!







□■






『……っていう夢を見たんだ。』

「すげぇ設定細かい夢だなオイ。
姫がティナっていう所がお前らしいよ…。



飛空挺のギャンブルルームの机の上、あたしは今日見た夢を報告していた。
けっこうおもしろい夢だったから話したのにロックには呆れ顔をされた(ロックにはもう話してやんない)


『あたしの想像力が豊かな証拠だろ?
まぁロックは格が上がって、泥棒から勇者の護衛の盗賊になってたけど。』

「むしろ下がってるわ!俺はトレジャーハンターなんだよ何回言わせる!!」

『はいはい。これからは泥棒じゃなくて盗賊に格上げしてあげるから文句言わない。』

「……誰かこのバカ(アユミ)に通訳してやってくれー。」

「お。相変わらず仲良いなーお前ら!」

『「仲良くなんかない!」』


そこに、勇者様……もといマッシュが豪快に笑いながら部屋に来た。
簡易なナップザックを持っているということはこれから修行にでもいくのだろうか。
……相変わらず修行好きなお人だ。


『はー…。で、マッシュは今日も修行しに行くの?』

「ん?ああ。ちょっと魔の森で修行してこようと思ってさ。
セッツァーにはもう頼んであるんだ。」

「あんな呪われた森で修行しようと思う男はお前くらいだよ…。」


あっけらかんと言うマッシュにロックは青い顔をしてこたえた。
……まぁ、そこんとこはあたしも同じ気持ちかもしれない(幽霊が怖いとか、そんなんじゃないぞ、決して!)


「いや、実は今日の正午だけ魔の森に太陽があたるらしいんだ。
これが十年に一度らしくってさ。
……明るい魔の森ってどんなんかちょっと興味わかねぇ?」

「別にお宝が出るわけでもなし興味なんて『行く!』オイィィィィ!!


マッシュの情報にいち早く頷いたあたしにロックが盛大に突っ込んだ。
ロック……あたしはその場のノリで生きてるんだ、悪いな。←


『明るい魔の森見てみたい!だってマッシュに聞いた話では普段の魔の森は木に囲まれて空も見えないんだよな?
薄暗い魔の森が明るくなるところ……見たい見たい!!あたしも行っていい!?』

「もちろんいいぜ!そのかわり修行付き合えよー?」

『合点承知!』


笑顔で親指を立てて返事をすると、マッシュの大きな手があたしの頭をガシガシと撫でた。
うわあ、楽しみだなぁ。明るい魔の森!(キラキラ)


「………俺も行く。」

『は?興味ないって言ってたじゃん。変なロック。』

「(お前がどこ行っても問題起こす名人だからだろうが!!)ま…保護者だからな。」

「(ロックも鈍いよなぁ)んじゃ、空を拝みに行くか!」

『………ぷっ!ーーいよーし!勇者マッシュに続けぇぇぇ!!』

「勇者?何だそれ。」

「………アユミの中でのマッシュの姿、かな?」














(私を置いて行くなんてひどいじゃないかハニー。
さ、腕を組んで歩き出そうじゃないか!)

(……ここであったが100年目。覚悟しろ魔王ーーーーっ!!)

(え??私はエドガーなんだが…アユミ待っ……ひぃぃぃぃぃ!??)

(兄貴がまたオチ担当か。不憫だ…。)





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