落乱小説

□笑っちゃダメ!
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「もう…それで?金吾になんの用なの?」

金吾に呆れて僕が一年生に聞いてあげた

「あの…剣術の稽古をつけてもらいたいんです!」
「剣術の?」

金吾は術の腕を磨き、六年になるころには学年一の使い手となった
まだまだ戸部先生には敵わないけど、いつかきっと勝ってみせるって前に言ってたっけ

「僕の家は武士の家系で…でも僕全然ダメで…それで…」

あわわわ
泣きそうだよぅ…

「金吾どーするの?」
「別にいいけど…」
「なら笑顔で言ってあげなよ」
「えが…わかったよ…」

こそこそと話してる僕たちを見つめたままの一年生
その子の頭に手を乗せて満面の笑顔で金吾は言った

「俺の稽古は厳しいぞ?」

それはそれは男前すぎて、僕は少しの間見とれちゃってた
だってすっごいカッコイイんだもん!
でも言われた一年生は顔真っ赤になってるし、周りで聞き耳たててた他の生徒までも顔を赤く染めながら金吾を凝視してる

「?どうしたんだ?」
「ダメー!」
「喜三太?」

なんだかそれが悔しくて僕は金吾に抱き着いた
五年から一気に伸びた僕の身長は金吾を抜いては組一だ
そんな僕に抱きしめられてるんだから金吾は身動きできないでいた

「稽古はつけてくれるって!ほら、もう行ったら?僕たちまだご飯の途中なの!」
「あ…はい、すみません!ありがとうございます!」

有無を言わさぬ僕の物言いに、一年生は引き返した

「おい喜三太どうした?」
「なんでもない」
「?」
「早く食べよ。君達も何か用?」

周りの生徒に問い掛けると、みんな首を横に振りながらそそくさと逃げて行った
金吾も僕の顔ちらちらと見ながらも、なにも言わずに食べはじめた
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