落乱小説
□消毒
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「いてっ」
ぴりっとした痛みが指先に広がる
見るとぷっくりと血が浮かんでいた
「どうした?」
「切ったみたいで…」
背後から覗き込む先輩に鼓動が早くなった気がした
多分顔は赤くなってるかもしれない
「痛いか?」
「大丈夫っす」
こんな近距離でいるだけでもドキドキするってのに先輩は俺の右手を掴み、怪我をした人差し指をその口に運んだ
「んなっ!?」
あまりのことに固まる俺
先輩はそんな俺に気付かないで傷口を舐めつづける
「ちょっ…せんぱっ…」
「んぅ?」
ああああ
もうやばいって!
「おーい留ー」
俺の理性が吹っ飛ぶ寸前
タイミングいいのか悪いのか、先輩の名を呼ぶいけどんさん
先輩は俺の指から口を離してしまう
「今行くっつの!あ、ちゃんと消毒しとけよ?」
そう言い残して先輩は行ってしまった
俺はと言えばなんの返事もせず、ただただその背中を見送るだけ
少し視線を逸らして俺から先輩を奪った人物を見れば向こうもこちらを見ていた
その顔は笑っていた
「ちくしょー」
一人呟いた
右手を見るとまた血が滲んできてる
先輩の唾液で濡れたその指を俺は口に含んだ
→あとがき