another story

□ホットミルク
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これはまだ、祐希が此処に住みはじめてすぐの事






「祐希、もうそろそろ寝ましょう?」



「でも陸斗さん、仕事…」




日付が変わる頃、ソファで俺の仕事が終わるのを待つ祐希にそう言うも、俺より先に寝るのは気が引けるのか首を縦に振ろうとはしない




「では、俺ももう風呂に入って寝ようと思っていたのでそれまで待っててくれますか?」



「ん、分かった。ごめんね…」



「なにがですか?祐希は先に寝室行っててください。寝てて良いですからね。
俺もすぐ風呂入ってくるので」




自分のせいで俺が気を使ったと思ったのか、俯いて呟く祐希


ソファに座る祐希の前にしゃがみ目線を合わせて、そう言うと祐希は小さく頷き寝室に向かった


パタンと祐希が小さなドアの音を立てリビングを出る




「謝ること、ないのにな…」





本人は気づいていないだろうが、泣き出しそうな顔をして俯き謝る祐希


その姿を見るのはとても心苦しかった





祐希は此処に来てから謝ってばかりだ


否、ここに来るまで謝ることしか出来なかったのかもしれない

そうしないと酷い目に合ったのだろう


何度も、何度も。


その繰り返しで、自分を卑下する事と自分を否定するように謝ることを覚えてしまったんだろう




祐希を否定なんてしないのに


言葉も行動も全部、受け止めるのに





「難しい、な…」



自嘲気味に呟いた言葉は、静かなリビングに一瞬で溶けて消えた






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