あの空の向こう側に

□横顔
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「きれー……」


「、っ!……誰……っ」


「え?っ、わ!お、俺……すいません、突然っ!」




無意識に出た言葉に、自分でもゾッとした

どうしようとワタワタしていると、ベッドの上の人物は酷く怯えた声で今にも泣き出しそうな顔をしてた





「ゃ、誰……っ……」






少し、幼い声。

布団をグッと口元まで被せて、俺の事を酷く怖がっていて。


この距離でもこいつの手が震えてるのが分かった




「っ、俺……俺、岡安瑠衣。ちょっと迷っちゃってさ。
突然ごめん。驚かせるつもりはなかったんだ」




こいつをちょっとでも安心させようと、その時の自分なりに必死だった

でも結局普通の事しか言えなかったんだけど。

それでも、少し被っていた布団を握る力を緩めてくれて





「よかったら、そっち……行ってもいい?」



「……、……」







これは頷いてくれた、のかな?

なんとなくで察して病室に一歩足を踏み入れた



殺風景な室内。本当にものがない。

窓辺にあるテディベアだけが、その部屋に色味を与えていた




怖がられない程度に、少し距離を置いてそこに立ち止まる


近くで見ると、さらに綺麗な顔をしてるのがわかった。
少し色素の薄い焦げ茶色の髪は長い訳ではなさそうだが、ゆるく短い尻尾のように後ろで1つに縛っている




歳は……俺と同じくらい、それか数個下だろう

それにしても、男?






「……ここのドアだけ少し開いてて、つい覗いちゃったんだ。ごめん。あ、名前。名前は?」




「……そ、」


「ん?」


「……っ、そう……」





こんなに近くにいるのに、聞き落としてしまいそうな程小さな声


そう


どんな字なんだろうとか、いい名前だなとか色々思ったけど、なによりすごく似合った名前だと思った





「そう、か。よろしくな!」


「…」





俺がそういうと、ソウは俯いてしまった

笑うでも怒るでも、泣くわけでもなく。


さすがの俺でも、どうしていいか分からなくなる
もちろんソウからみたら俺は迷惑だろうし、ソウから嫌いって雰囲気が出てる気もする。




「あ、……今、いくつ?」


「…、15」


「じゃあ俺の1個か2個下か」


「……、どっか」


「え?」




ソウが急に話を切り替えた

相変わらず顔を俯かせて。




「……迷った、て……」


「あ、まぁそうだけど……」


「………どこ、……」


「あ、場所?えーと、事故った友達ん所……骨折ったとか言ってたっけ」






あまりにも突然のことだったから、何も分からずにただ聞かれたことに答える


最後にそれだけいうと、ソウはゆっくりとベッドから起き上がり床のスリッパへと足を伸ばした


まさか、送ってくれるつもりなのだろうか




「ちょ、待って。調子悪いんじゃないの?いいよ、誰かに聞くから」


「大丈夫……」


「そ?……じゃあ、お願いします」






俺はソウの言葉に甘えて、少し先を歩き始めていたソウの後ろを追いかけた





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