詠-uta-

□名もなきエデン
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蛇の囁き
魅惑の林檎
私は降り立つ
この地の果て


私は歩き出す
地上ではない
天界でもない
地獄でもない
何の名前もない
ただの地
重力なんてない
私の意志で
私の意識だけで
ただ
ただ定めた
これが下だと


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は悟る
その気配


誰もいなかった

誰もいない
わけではない
誰かはいた
声も聞こえない
姿も見えない
それでも
誰かはいた
ただ
ただ私の前に
現れなかった


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は探す
まだ見ぬ人


私はその誰かを探した
話してみたくて
声を聞きたくて
姿を見たくて
見たいと思えば
思うほど
私の欲は
強くなる
ただ
ただ初めは
会ってみたかった
それだけなのに


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は見入る
あなたの目


その人は
ようやく
私の前に現れた
私に似た風貌
私に似た姿
私より高い背
私より低い声
私に似ている
ただ
ただ何処かが違った
何が違うか
分からない


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は思う
この瞬間


何が違うか
分からなかった
私は考える事を
終わりにした
一人ではなくなった
それだけで
充分だった
それ以上に
求めるものは
何もなかった
この時までは
この瞬間までは


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は知ってる
あの場所


私が中心とした
木には
赤い
朱い
紅い
実がなっていた
気にはしなかった
食べる事を
知らなかった
ただ
ただ実がなっている
それだけだった


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は聞いた
その言葉


白く長いものが
木に蔦って
話始めた
短く
とても短く
小さく
とても小さく
囁くように
話始めた
ただ
ただ聞き入っていた
何の疑いもなく


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は気付く
その違い


気付いてしまった
気付かされて
しまった
白く長いものは
姿を消した
違いが
分かってしまった
分からされて
しまった
もう
気付かなかった時には
戻れない


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は聞く
あなたの違い

あなた
気付いていたのね
あなた
分かっていたのね
あなたと

違う部分
違う感情
今まで
気付かなかった
ねぇ
知っていたのでしょう


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は解る
この空間


放置されていた
この世界に
置かれていた
この地に
学んではいけない
知ってはいけない
そんなものばかり
だったのに
もう
もうこの場所に
いることは
許されない


蛇の囁き
魅惑の林檎
私は行く
思いだけで


あなたも
行くのでしょう
あなたも
行かないと
いけないのでしょう
私と
一緒に
違う世界へ
違う地に
あなたも此処には
いられない
そうでしょ


蛇の囁き
魅惑の林檎
そして
あなたと私は地に堕ちる
 

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