Mystery magic.

□FILE4.ホームズ・フリーク
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カルトクイズと表し、渡された資料集。
みなみと快斗が寝てしまった事を確認し、二人は部屋の隅に設置された一人掛けソファに対面して座り、テーブルに紙の束を広げて文字を書き連ねる。
スラスラと解いていく祐樹を見やり、むっ、とコナンは祐樹を見た。



「・・・・・・何だよ」
「随分余裕そうじゃねぇか」
「そう言う工藤もねー。
 暇な時には必ず推理小説読んでたからねぇ。
 覚えるのも当たり前なような気がするけど?」
「お前今何問目?」
「後一問」
「嘘っ!?」
「ホント、・・・・・・・・・」



最後に書かれた一文を見やり、え、と止まる。
どうした、とコナンが顔を上げるが、何でもない、と苦笑した。



「さって、終わったから寝るけどどうする?」
「ッ、俺が終わるまで待てよ!」
「ったく、負けず嫌いなんだから。
 分かった、待つからさっさと解いて」
「おう!」



苦笑しながら、手中でうたた寝する朱雀を撫でる祐樹。
ソファに深く座り朱雀で遊ぶ祐樹を見て、楽しそうね、と胸中で呟いた。


























翌日になり、昼、夕方、夜、と経過した時間。
そんな中でさっさと解いたメンバーと同伴者は紙の束を脇に置き、夕食を終えた時だった。



「それにしても全然姿を見せないな、オーナー」
「早くオーナーを呼んでテストの採点を始めてちょうだいよ!」



一日中姿を見なかったオーナーの金谷に、痺れを切らした藤沢と、大木 綾子(オオキ アヤコ)は声を荒げる。
溜め息を吐いてコナンと共に立ち上がると、朱雀がみなみの前を羽ばたいた。



「す、朱雀?」
「 ピ、ピィイ!! 」
「どうし・・・・・・!
 まさか・・・・・・!?」



慌てて窓の方へ駆け寄ると、ゆっくりと少しずつ動いているもう一台の車。
窓を開けそこから飛び出すと、オーナーが車を崖の方へと走らせていた。



「・・・・・・・・・ッ」



ちらりと見えたオーナーの様子に、絶句して立ち止まる。
慌てて追ってきた快斗を見やり、バッとみなみを抱き締めた。



「見るな!」
「で、でもっ・・・・・・」
「いいからッ・・・、こんなの、黒羽に見せたくないッ・・・・・・
 見せるべきじゃないッ・・・・・・!」



そう言って、快斗に見えないように自分が崖の方を向いて抱き締める。
ガコッ、とタイヤが脱輪する音を聞き、落下していく車に目を閉じ、爆発するのを待った。
一瞬後、崖下に転落し炎上する車。



「朱雀、ありがと・・・・・・」



影のかかった表情で苦笑し、朱雀を撫でる。
崖下に転落した車を確認し、溜め息を吐くと時計を見た。



「・・・・・・車から出てくる人影なし、オーナー死亡」
「!
 じゃあまさか・・・・・・」
「今のところ、全員アリバイ成立・・・・・・
 厄介だね」



そう言って窓の開いた室内を睨む。
すると、全員が室内からこちらを見ていた。
遅れてやってきたコナンと平次、みなみにも状況説明し再び溜め息。



「祐樹?」
「何、いずみちゃん」
「無理しないでよ。
 私だって、心配してるんだから」
「ははっ・・・、大丈夫だよ。
 動ける探偵は僕と服部だけだけど、ちゃんといずみちゃんにも頼るから」



みなみの手を取り部屋に戻る。
いつの間に履き換えたのか運動靴な祐樹に、みなみは思わず噴き出した。



「いつ履き換えたの」
「窓から飛び降りて、走り出す直前。
 誰にもバレないよう素早く、マジシャンの基本でしょ?」
「確かに」



クスクスと笑みを浮かべるみなみに、いいから行くよ、と手を引いたままペンションへと戻る。
靴を履き換え室内に入ると、オーナーが死んだ事を告げた。



「パネルに毛布をかけ、エンジン音がせず独りでに走り出し落下した車・・・・・・
 中のオーナーは死亡。
 死亡していたと考えたところで何も残ってないから検視は出来ない。
 後で何か残ってないかは確認しに行くけど、多分絶望的だろうね・・・・・・」



そこまで言い、ちらりと室内にいる人間を見る。
各々考え込むようにして顎に手を当てていた。



「・・・・・・とまぁ、オーナーの試験的にしてみましたっ。
 俺はこれから考えるので部屋戻りますねー。
 行くよ、三人とも」



ニコリと笑み、快斗、コナン、みなみの手を引いて部屋を出る祐樹。
待った、と平次が声を上げた。



「何やその、自分らは犯人やない、みたいな逃げ方は。
 一番に事故現場駆け付けよってからに、自分が犯人です、ゆーてるようなもんやろ!」
「ぇえ、平次兄ちゃん、工藤 新一は知ってるのに新井 祐樹は知らないの?
 祐樹兄ちゃんも結構なシャーロキアンで有名なのに!」



驚いたように声を上げるコナンに、むっ、と平次は祐樹を睨む。



「それ、ホンマか」
「何なら証拠、見る?」



そう言って机に置きっぱなしだった紙の束を投げ渡す。
ペラペラと捲る平次に周りのシャーロキアンも覗き込んだ。



「・・・・・・ぜ、全問正解・・・・・・」
「え、コレこうなのか!?」
「嘘、じゃあここ、こうじゃないの!?」



岩井が呟いた一言に、辺りがざわつき始める。
コナンも、さすが、とフッと笑みを浮かべた。



「じゃ、部屋にいるんで何かあれば呼んで下さい」



そう言って、踵を返し部屋を退室する。
自室に戻り、ノートとシャーペンを取り出した。



「祐?」
「とりあえず整理しよう」



そう言って話を切り出す。
第一の事件、と書き、金谷の名前をノートに書いた。



「まず、被害者金谷の発見時。
 昨日見た、あの格好のまま車に乗っていた。
 俺が駆け寄った時、車はスピードを上げた。
 近づいて中を見たら、パネルには毛布、音はエンジン音とは違う風の音がしていた」
「風の音?」
「うん。
 念の為思い出してみたけど、クーラーを使った痕跡はなかったよ」
「って事は、クーラーじゃない風の音・・・・・・」
「そうなるね」



書き込みながら整理していく。
そんな祐樹を見、さすが、と呟いた。



「推理力と観察力は衰えてないみたいだね」
「まぁね。
 衰えてたら仕事にならないって」



苦笑して言えば、何の話、と食い付いてくるコナン。
何でもないよ、と言うと、で、と祐樹はペンを回した。



「何か気になった事は?」
「オーナーは、どういう風に運転してたんだ?」
「普通に、だよ。
 死体特有のだらりとした感じじゃなく、ごく普通に運転していた」
「そうか・・・・・・」



そう呟き考え込むコナンを見、一瞬だけ笑みを浮かべた。











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