Mystery magic.

□FILE2.意外な目撃者
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新井邸―――。



「―――ってワケ。
 まぁ昨日ここで一通り用件聞いて、助っ人も頼んだんだけど」
「祐、樹兄ちゃんがやるんじゃダメだったの?
 変装も声真似も得意じゃなかった?」
「俺はほら、いずみちゃん護んなきゃ」
「そゆ事」



ニッコリと笑みを浮かべ、言う。
ほら、とたまたま家に置いてあったジュースを子供たち、紅茶をみなみ、コーヒーをコナンと哀の前に出した。



「あ、ありがとうございます!」
「お構いなく、って言おうとしたのに」
「遠慮しなくていいんだよ、灰原は・・・・・・」



哀の言葉に思わず呟き溜め息を吐く。
さて、と立ち上がった瞬間、ケータイが鳴り響いた。
言わずもがな、みなみの物だ。



「いずみちゃん、出ていい?」
「うん」



頷いた瞬間ケータイを取ると、通話キーを押した。
こほん、と一つ、咳払い。



「もしもし?」
『―――』
「どうせ“歌うな”って言うだけなら早くしてくんない?
 私、そんなに気は長くないんだよね」
『―――デモテープを捨てろ』
「!
(やっぱり関係が・・・・・・)
 もしもしっ?」



聞き返そうとした瞬間、通話が切れる。
手にしたもう一台のケータイには、発信探知機が表示されていた。



「ありがと、いずみちゃん」
「で、どうだった?」
「犯人の目的はやっぱりデモテープみたいだね。
 一応逆探知されないようにこの家からの通信はいろんな場所から掛かるようにしてあるから大丈夫だよ、家の場所はバレない。
 後、俺のケータイからも同じ電波が流れてるから早々見つからないようになってるから」



そう言ってケータイを翳す。
まぁこの対策はここだけじゃないんだけど、と心の中で小さく呟いた。



「デモテープか・・・・・・
 昨日聞いて、思い出してみて、やっぱり何もなかったんだけどなぁ」
「ねぇ、祐、樹兄ちゃん!」
「言いたい事は分かる、でも・・・・・・」



そう言った瞬間、今度は祐樹のケータイが鳴った。



「はい、新井」
『あっ、祐樹君!?
 みなみさんが、みなみさんがっ・・・・・・!!!』
「青子、落ち着いて、最初から話せる?」
『・・・・・・う、うん、落ち着いた』



電話越しに聞こえた声に、冷静に対処する。
用件は、みなみ(に扮した快斗)が攫われたという事だった。



「今から武道館に向かうから、青子も向かって」
『分かった・・・・・・
 みなみさん、無事だよね・・・・・・!?』
「必ず助けるよ」



そう言って電話越しに小さく笑み、通話を切る。
小さく溜め息を吐いた。



「いずみちゃん、大人びた、おっとり風の女性の声、演じれる?」
「うん、最近アクションダークファンタジーアニメで演じたから、大丈夫」
「OK、適役!
 じゃあちょっと待ってて」



そう言って階段を駆け上がり数分後、適当にフォーマルで白っぽいジャケットとロングスカートを持ってくると、布を前に被せる。
ポンッ、という音と共に布を取ると、先程の服に着替えていた。



「ごめんいずみちゃん、時間ないから髪の毛テキトーに結ぶよ」
「う、うん。
 この服装に合うようにでいいから」
「任せといて」



なるべく頭が動かない程度にブラッシングし、纏め上げる。
長いロングヘアを二つのおさげに結い、おさげの先をシュシュで纏めた。



「よし、後は声だけど、子供たちと喋ってて。
 僕に聞こえるようにね」
「分かった」



頷くみなみに、片付けを済ませ、コピーしたデモテープを引っ掴んでメッセンジャーバッグに仕舞う。
自分もさっき羽織っていたパーカーを羽織り直し、メッセンジャーバッグを肩へ掛けた。



「バッチリだね、いずみちゃん」
「ありがとう」
「さて、俺は仕事だけど・・・キミたちも来る?」



そう言ってニコリと笑みを浮かべる。
うん、と探偵団たちは迷わず頷いた。


























武道館、控室―――。



「「失礼します」」



声を合わせて入ると、丁度目暮 十三(メグレ ジュウゾウ)たちがやってきていた。



「警部!」
「ゆ、祐樹君!
 それに子供たちも・・・・・・
 そ、そちらは?」
「あ・・・・・・」
「従姉の新井 いずみです。
 ちょっと要り用だったので連れてきました」



苦笑してお辞儀させる。
そうして、髪を解かせた。



「「「えっ!?」」」
「すみません、昨日から僕の家に泊めてました。
 従姉弟で僕が探偵だから、と彼女に頼まれてしまって」
「大事な従弟を危険な目に合わせたくはなかったんですが、彼の活躍っぷりに思わず・・・・・・
 連れ去られたのは、私に変装した彼の友人です」
「物真似上手な子なんですよ」



補足するように苦笑すると目暮警部は信じたのか、ほう、と納得していた。



「彼女は声優なんで、さすがにここに来るまでバレるのはマズイって事でこの服装の役になりきってもらってまして」
「どうもー・・・・・・」



苦笑して言うみなみに、座って、と椅子へ促す。
コナンが溜め息を吐くと同時に、電話が掛かってきた。



「じゃあ、すみませんが・・・・・・」
「も、もしもし」
「ゆ、祐樹君!?」



真っ先に受話器を掻っ攫い、電話に出る。
ぬかりなく声も変え、あわあわとおどけた男性を演じてみせた。
スピーカーを、と手で合図する。



「せ、責任者、ですか・・・・・・?」
「ワシが出よう」



一度受話器から耳を離し、首を横に振り、バレない程度に軽く咳払いした。



「もしもし、警視庁の目暮だが」
「「「!?」」」
『ほう、これはこれは・・・・・・
 捜査一課自らのお出ましとは、光栄ですなぁ』



ニヤリと笑みを浮かべ、ピッとみなみに向かって指を立てる。
シィ、と合図すると、何が目的なのかを問いただした。



『私は所謂ストーカーって奴でしてね・・・・・・
 みなみちゃんの持ってるものなら何でも欲しいんですよ。
 特に彼女の、バッグとかね・・・・・・』
「こ、これっ?」



青子がオドオドと快斗が持っていたであろう鞄を持ち上げる。
それを見やり、フッと笑みを浮かべた。



「分かった、すぐにワシの部下に届けさせ」
『ッハッハッハ!!
 私をなめないで下さいよ!』



声だけで本当の目暮警部だと信じて疑わない犯人になめるも何も、と一同は思う。
―――が、犯人は荷物を持ってくる相手を青子だと指定した。



『さ、早く持って来させて下さいよ・・・・・・
 10分後、九段下駅の九段坂方面行の電話にまた掛ける』



その声が聞こえ、電話はブツリと切れた。



「全部俺の声だと気付かずに切りやがったな、あの犯人・・・・・・」



ポツリと呟く祐樹。
いや、無理だろ、と全員の心が一致したのは言うまでもない。
そんな中、どうしよう、と青子が呟いた。



「祐樹君のお友達が・・・・・・」
「だーいじょうぶ。
 俺が何とかするから。
 青子は心配しなくていいって」



そう言ってぽんぽんと泣きそうな青子の頭を撫でる。
青子に白い布をすっぽりと被せると、先程みなみが着ていた服装へ着換えさせた。



「この服、借りてくね」



そう言ってばたん、と扉を閉め、1秒後に再び扉が開くと、祐樹は青子の恰好をしていた。



「どうよ?」
「うっわー、青子そっくり!」
「やっぱ役者になれるよ、祐樹!」
「役者はいいよ、俺そこまで芸達者じゃないから。
 じゃ、行ってくるね」



そう言って持ってきた鞄を預け、コピーしたデモテープと快斗が持っていた鞄を手に、三度扉へ手を掛けようとした時だった。



「僕も行く!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



動きを止め、服の裾を引っ張る本人―――コナンを見つめる。
中見えるんだけど、と思いながらも、コナンの目線へしゃがみ込んだ。



「大丈夫。
 俺が上手くやるから。
 工藤は気にすんな」
「でも!」
「友人が気になるのは分かるよ。
 だけど、コレはいずみちゃんの仕事にかかわる問題。
 ―――尾行するのは、勝手だけどね?」



フッと笑みを浮かべ、ぽんぽん、と頭を撫でた。
スッと立ち上がり、振り返る。



「―――行ってきます」



苦笑にも似た笑みを浮かべ、祐樹はそう告げた。











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