Mystery magic.

□FILE8.マジック好きの王女様
2ページ/3ページ




会場入りすれば、かなりの大人数な警備体制。
思わず溜め息を吐き、用事思い出した、と青子に告げ二人してその場を離れた。
結果、二人並んで廊下を歩く羽目になったのだが。



「なぁ、祐」
「何?」
「何で、みゆきの恰好だったんだ?」
「何となく、かな。
 やっぱり、野郎の恰好で言われるよりモチベーション上がるでしょ?」



ふふん、とドヤ顔で言う祐樹に、はいはい、と苦笑し、近くの警備員二人を男子トイレへと連行した。



「あ、そういや祐って犬猫嫌いだったよな?」
「え゛、何かあった?」
「王女様、無類の猫好きだけど、知ってた?」
「うっわー・・・ごめん、青子の傍にいとく」
「え゛、今回俺一人!?」
「応援と援護だけはするよ」
「マジかよ・・・・・・」



はぁ、と溜め息を吐いて項垂れる快斗。
二人も必要なかったな、と呟くが、まぁいいか、と警備員二人の身ぐるみを剥ぎ、念のため変装して声を上げた。


























「あーおこっ」
「、祐樹君!」
「ごめんごめん、ちょっと中を見て回ってたら時間食っちゃってさぁ」



そう言ってさり気なく青子を人込みから外す。
少し離れた場所に落ち着き、溜め息を吐いた。



「ど、どうしたの?」
「ごめん、さっき、王女様が抱いてた猫ちらっと見ちゃってさ。
 俺猫嫌いだから、」
「あー、そう言えばそうだったね。
 どうする、青子と帰っちゃう?」
「いやでもさ、親父さん待ってないと。
 キッド・・・じゃない、黒羽もはぐれちゃったから先帰っちゃうと・・・ね?」
「そっかぁ・・・・・・」



そう言って青子も溜め息を吐く。
寒いでしょ、と上着を渡した。



「え、いいよ、青子別にそんな」
「いいから、素直に受け取っときなよ。
 いくら青子が男じゃないかってバ快斗に言われようと、青子は女の子なんだからさ」



上着を青子の肩にかけ、ニコリと微笑む。
―――瞬間、キッドを吊るしたバルーンが、真っ暗になった王女の部屋から飛び出した。



「!
 ごめん、青子!
 ちょっと行ってくる!」
「ぇえっ!?」
「すぐ戻るから!!」



そう言って人込みに入り、木々の中に入っていく。
木を淡々と登り、見えないよう真っ黒な服装で屋根に登ると、屋内からそれを確認したキッドはハンカチに包んだ宝石を投げた。



「ナイス!
 後は俺に任せて!」



それをキャッチし素早く木を伝って降りる。
誰も見ていない事を確認し、月に翳して見せる、が―――。



「ハズレ、か。
 よっし、後は中森警部に返すだけだな」



フッと笑み、立ち上がる。
宝石をハンカチに包んだまま上着のポケットへとしまい込んだ。



「きゃぁあっ、キッドが、4階の私の部屋に!!」



出てきた王女は猫を連れずに中森警部に駆け寄る。
そのまま、別館に避難します、と告げ、去ろうとした時だった。



「待った!」



中森警部が王女の手を掴み、静止を掛ける。



「大事な猫と、宝石はどうしたのですかな?」
「そ、それは怪盗リオに」
「いや、奴が現れたという報告は今現在聞いていない!
 ましてや猫好きなあなたが猫を連れていないとはどういう事ですかな、キッド姫!」



抑えろ、と叫ぶ警部に、祐斗に変わった祐樹は瞬時に王女の変装を解かせたキッドを連れ出し、オブジェの上に飛び乗り、ライトを付ける。
高らかに、キッドは笑い声を上げた。



「さすがは中森警部!
 “王女様が猫好きとは知らなかった”!」
「この宝石も、我らが求めるに相応しい宝石ではなかったようだ・・・・・・
 コレは警部にお返ししますよ!」



そう言って宝石を警部に向かってふわりと投げる。
キャッチしたそれを見やり、二人は顔を見合わせフッと笑みを浮かべた。



「あなたが居ると仕事がやりづらくてしょうがない!」
「ぜひ、我らの担当から外れていただきたいものですな!
 ですが・・・あのドロンパとかいう刑事よりは逃げ甲斐がありそうですよ!」
「「では、また月下の許、お会いしましょう・・・さらばっ!」」



煙幕を張り、それと同時に真黒な服に着替え、像を降り立つ。
視界から外れる場所まで走り、ナイス、とハイタッチした。



「さって、後は青子だけど」



そう言って着てきた服に着替え、姿を探す。
見つけ、フッと笑みを浮かべた。



「「青子ーっ!!」」
「あっ、快斗に祐樹君っ!
 こっちこっち!!」



手を振る彼女の姿を見、再びハイタッチ。



「とりあえず、」
「作戦成功、って事で!」



ニコリと笑みを浮かべ、ほら行くよ、と快斗の手を取り走った。











次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ