Mystery magic.

□FILE4.ホームズ・フリーク
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「Hello,名探偵」
「何でそんなに無駄に発音いいんだよ・・・・・・」
「ま、まぁまぁコナン君」



呆れて言うコナンに、みなみが宥める。
ごめんね、と祐樹はみなみに向き直り、言った。



「別に大丈夫だよ」
「そう?
 黒羽だけじゃちょっと心配で」
「ちょっと祐ちゃぁん、それどーゆー事?」
「そのまんまだよ」



苦笑して詰め寄ってくる快斗に言う。
疑いの眼差しでコナンが見ているのに気付き、どうした、と目線を合わせるようにしゃがんだ。



「祐樹兄ちゃん、そっちの兄ちゃんと仲いいね」
「まぁ幼馴染だしね。
 改めて、江古田の方の幼馴染の黒羽 快斗。
 黒羽、この子が江戸川 コナン」
「おう、よろしく!
 祐斗が世話になってるって?」
「あ、知ってるんだ」
「まぁなー。
 いつも祐斗が探偵団の話してくれるし」



そう言った快斗を一瞬呆れたように見るが、気にせずに四人で迎えを待つ。
と、漸く来たマイクロバスに乗り込み、唯一空いていた一番後ろの座席に四人で座った。
先に乗っていた乗客たちは皆シャーロキアンらしく、各々語りたいように語っている。



「あなた方は何がお好きなんです?」



唐突に振られた話題に戸惑うが、ニコリと笑みを浮かべた。



「この二人は僕らの付き添いで、僕らは“四つの署名”が好きですよ」



そう言うと、歓喜の声を上げる関係者。
ねぇ、とみなみが祐樹の肩を寄せて膝枕の形にした。



「・・・・・・あのー・・・、いずみちゃん?」
「ちょっと、状況説明してよ!」
「さっきしたじゃん。
 何か起きたら実質僕一人で対処しなきゃなんだよ?
 くど、じゃない、江戸川の推理とかさ、間近で見たくない?」
「あ、それは見たいかも」
「いずみちゃんも何だかんだ言ってミステリ好きだったでしょ、訪わずだけど。
 だからたまにはいいんじゃないの?
 それに、ちゃんと仕事の日は外してあげたでしょ?」



そう言ってニコリと笑みを浮かべる。
そんな祐樹に苦笑し、ありがと、と呟いた。















 FILE4.ホームズ・フリーク















コナンや祐樹たちを乗せたマイクロバスは、漸く一つのペンションへと辿り着いた。
一緒だった、藤沢 俊明(フジサワ トシアキ)、清水 奈々子(シミズ ナナコ)、川津 郁夫(カワヅ イクオ)、そして運転手の岩井 仁美(イワイ ヒトミ)は各々荷物を持ってペンション、“Mycroft(マイクロフト)”へ入っていく。
エナメル質のバッグを提げ、コナンとみなみの荷物を持つと、続いてペンションへと入った。



「やぁ、皆様!
 このペンション“Mycroft”にようこそおいで下さいました!
 私がこのツアーを企画したオーナーの金谷(カナヤ)でございます!」



そう言って、ホームズのコスプレをした金谷 裕之(ヒロユキ)は笑みを浮かべる。
それぞれは荷物を足下へ置き、各々床に座ったり立ったり椅子に座ったりしながら自由に話を聞いていた。



「なぁ、祐」
「ん、どうしたの、黒羽」
「俺ちょっと寝てくる。
 遅くまでいろいろやってたもんだからよ」
「OK。
 鍵掛けて寝ても扉蹴破ってでも起こすからね?」
「はは、頼もしいな」



そう言って部屋を出ていく快斗。
ばいばーい、と小さく手を振ると、ぴょん、と朱雀が服の中から出てきた。



「 ピ! 」
「と、鳥!?」
「あー、大丈夫ですよ。
 俺の相棒なんです、こいつ」
「わぁっ、朱雀だぁ!」



そう言うコナンの許へ、朱雀は降り立ち、すりすりと頬擦りする。
そんなコナンを見、みなみはしゃがんでコナンの頭を撫でた。



「珍しいねぇ、朱雀が他人に懐くなんて。
 コナン君だからかな?」
「だろうね。
 朱雀は人を見る目があるからねぇ」



そう言って朱雀に手を伸ばした瞬間だった。
シャーロキアンたちがコナンを取り囲み、キミの名前はコナンなのか、と嬉々としていた。
自己紹介を済ませ、各自の部屋へと通される。
快斗、みなみ、コナン、祐樹は同じ部屋だが、快斗に既に鍵を渡してあるので、当然祐樹たちは鍵を持っていなかった。



「はいはーい、探偵君はちょっと目を瞑っててねー」



そう言って片手でコナンの両目を塞ぎながら針金を使ってちょいちょいと開ける。
カチャリ、といった音を聞き、ふう、と息を吐いた。



「祐樹兄ちゃん、ピッキングはダメだよ」
「大丈夫大丈夫、扉壊すより安全だから」



そう言って開いた扉を開け、部屋に入る。
荷物を置き上着を脱ぐと、寝入っている快斗に掛け布団代わりにと、持ってきた上着を掛けた。



「ま、どうせ暫く寝てるでしょ。
 ・・・・・・黒羽、鍵開けてくから俺らが出たら閉めてよ?」
「んー・・・・・・」



生返事な快斗に苦笑し、必要品を持って部屋を出る。
―――と、どこか見覚えのある色黒男と目があった。



「・・・・・・・・・?」
「―――久し振りやな、工藤 新一君?」



そう言った色黒男―――服部 平次(ハットリ ヘイジ)を見、怪訝そうに眉間に皺を寄せた。



「あんた、誰?」
「何言うとんのや!
 前、外交官のおっさんが殺された時に会(オ)うたやろ!!」
「(あー、そう言えば何かおっちゃんが解いた事になってたっけ?)」



遠い目をして溜め息を吐く祐樹に、何やねん、と平次は声を荒げる。
が、そんな事はお構いなしに踵を返すと、さっさとリビングへと戻ろうと足を向けた。



「祐樹!」
「いずみちゃん、」
「朱雀、忘れてるよ?」
「あ、あぁ、ごめん、ありがと」



そう言って頭に止まった朱雀を軽く撫で、ちらりと後ろを向いた。
ワナワナと肩が揺れているのに気付き、溜め息を吐く。



「初めまして、服部 平次君?」
「―――え?」
「俺、新井 祐樹ってんだ。
 よろしくな」



そう言って手で花の形を作る。
疑問を持ち同じ動きをすれば、ポンッ、と一輪のバラが現れた。



「男に花贈るのは自分でもどうかと思うけど、生憎それしか持ち合わせがなくてね」



そう言って再び踵を返し、いつの間にか来ていたコナンも連れ、リビングへと足を向けた。











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