Mystery magic.

□FILE2.意外な目撃者
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ぴんぽーん、と鳴ったチャイムの音に、はーい、と玄関の扉を開けに向かう祐樹。
開けて確認すれば、見慣れた顔がそこにあった。



「あれ、いずみちゃん。
 久し振り、どうしたの?」
「久し振り。
 ちょっと、顔見たくなってさ。
 椎菜(シイナ)君と音合わせもあるんだけど、やっぱり身内に会いたくて」
「身内って・・・・・・まぁいいけどね」



上がってよ、と開けっ放しの玄関から中へ誘導する。
夜中に訪れた来客は、高山(タカヤマ) みなみ―――本名を新井 いずみという祐樹の母方の姉の子供だった。
所謂従姉と言うやつだ。
変装を解きソファに座った彼女を見て、祐樹はティーカップを二つ、テーブルに置いた。



「で、どうしたの?
 ただ僕の顔を見たかっただけじゃないよね?」



フッ、と不敵な笑みを浮かべ、祐樹は足を組む。
さすが、とみなみは手を叩いた。



「従妹であるみゆきに頼みたい事があってね。
 まぁ、私としては可愛い可愛い妹に怪我とか無理とかさせたくないんだけど、やっぱり新聞を見てるとどうしてもね・・・・・・」



そう、リオの正体を知っている数少ない人物でもある。
ちなみに、盗一の傍を彷徨(ウロツ)いていて事故に巻き込まれた事も知っていた。



「ごめん、探偵業もそうだけど、怪盗業は本当にやめられない理由があるんだ。
 探偵が怪盗やるなんて、前代未聞なんだけど」
「分かってるよ。
 それでなんだけど」
「?」
「依頼は、私の護衛をして欲しいんだ」
「え、そんなんでいいの?」



思わず声が裏返る。
こほん、と咳払いし、理由は、と訊ねる。



「実は、数日前に脅迫されたの」
「脅迫ぅ?
 誰に」
「脅迫の原因はこのデモテープ。
 要件は低い男の声でただ一言―――、“歌うな”。
 で、数日間の内に起きたのは事務所のロッカー荒らしと鍵穴のピッキング」



そう言うみなみに、ふむ、と考え込む。
つい最近聞いた幼馴染のラジオの曲を思い出しながら、歌を紡いだ。



「さすがみゆきだね、ワンコーラスだったのに」
「覚えてる範囲だけどね・・・・・・
 ・・・・・・やっぱり、変なところは何もないと思うけど」
「うん、そのワンコーラスだけ流した後から脅迫電話とピッキングとかがあって。
 で、椎菜君とも今日、別れてから連絡が取れないの」
「なるほどね・・・・・・
 分かった。
 ちょっと待って、助っ人呼ぶから」



そう言ってケータイを取り出し電話を掛ける。
そうして掛かった電話は、すぐさま相手に繋がった。



「あ、黒羽?
 そう、俺。
 うん、ちょっと明日頼みたい事があってさ。
 ・・・・・・うん、あ、青子も呼んで。
 あぁ、任せた」
「・・・・・・ったく、危ないね。
 快斗君、だっけ、彼何も知らないでしょ?」
「でも、変装の達人だよ」



電話を切り、答える。
ニコリと笑む祐樹に、みなみは溜め息を吐いた。



「カモフラージュとして、青子ちゃんって子と快斗君は私に変装する係。
 で、明日抜け出せるように、だね?」
「そう言う事。
 明日、一気に片を付けるから。
 後そのデモ、録音させて」
「・・・・・・コピー、ってワケね」
「そ、こっちにも囮を用意しないとね」



ニヤリ、そんな効果音が合う笑い方をし、テープを預かった。















 FILE2.意外な目撃者















デモテープを書棚の見つからない場所へ隠し、祐樹の見立てで変装が完了したみなみを連れ、二人は新井邸を後にした。
真っ先に黒羽家へと向かい、こんな人だから、と見せる。
本人に直接性格や一人称、癖などを聞き、準備を済ませると、黒羽家を後にした。



「尾行されたら俺が勘付くから大丈夫。
 任せて、黒羽もちゃんと演じてくれるから」



そう言ってみなみの手を取り歩く。
―――と。



「あれぇ、祐樹兄ちゃん何してんの?」



空き缶を持ったコナンに声を掛けられた。



「ボディガードだよ。
 ちょっと、友人に頼まれちゃってね」
「ごめんなー、ボク!
 お姉ちゃん借りてるから!」
「(あ、バカ!)」
「―――“お姉ちゃん”?」
「えっ」



みなみの言動に、コナンの目が鋭く光る。
祐樹の手を引き、コナンは二人の間に立った。



「ねぇ、僕、“祐樹兄ちゃん”って言ったよね?
 その人は有名な高校生探偵、新井 祐樹だ。
 どうして、“彼が女”だって知ってるの?」



あっちゃー、と額に手を当て、困り顔をする祐樹。
一瞬後、降参だ、と両手を上げた。



「悪いな、江戸川。
 俺の従姉、新井 いずみ、もといTWO-MIXの高山 みなみだよ」
「・・・・・・ぇえっ!?」



思わず大声を出すコナン。
ここに人気がなくてよかった、と心底ほっとしたように溜め息を吐くと、仕方ないな、と言ってコナンと、その場に居合わせた探偵団を新井邸へと上げた。











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