Mystery magic.

□FILE8.マジック好きの王女様
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「え、警部が?」
『そうなの・・・・・・
 なんだか護衛に行った時に散々コケにされたみたいで落ち込んじゃって。
 だから、祐樹君何とかならない?』
「何とかって言われても・・・・・・」



休み時間に掛かってきた電話。
唐突な青子からの申し出に、うーん、と唸り、頭を描く。



「出来るだけ元気付けてみるけどさぁ。
 黒羽からも言ってやってよ」
『・・・・・・だって、快斗ってば余計に青子を怒らせるんだもんっ』
「何、そっちも痴話ゲンカ?
 懲りないってか似た者同士だよね、キミら」
『そっちも、って?』
「工藤と蘭、金田一と美雪の事。
 何なの、俺の幼馴染ズはケンカが好きなの?」
『うーん、多分それは祐樹君が絡んでそうな気がするな』
「正解。
 全部絡んでるけど、それがどうかした?」
『やっぱり・・・・・・』



苦笑交じりの声が聞こえ、どうしたの、と訊き返す。
何でもない、と言う青子に苦笑し、じゃあよろしくね、と言われて電源を切った。



「よろしくね、と言われましても・・・・・・」



そう呟いて、中庭に立つ自分の姿を見る。
いつもより地面に近い身体。
そう、黒羽 祐斗として帝丹小学校に登校しているのである。



「米花町(ココ)から結構距離あるんだけど・・・・・・
 また自転車で走んの・・・・・・?」



呆れた声で呟くが、仕方ないな、と教室に戻り、さっさと放課後にならないか、と溜め息を吐いた。















 FILE8.マジック好きの王女様















放課後―――。



「ねぇ、祐斗君も来ない?」
「俺パス!
 行かなきゃなんないからごめん!!」



そう言って歩いて5分の場所へダッシュで向かい、そこからリュックサックを前かごに乗せ、自転車を走らせる。
一度黒羽家に入り、今度は祐樹の姿でショルダーバッグを片手に新井邸へ行くと、みゆきとして飛び出した。
川沿いを歩いていると見知った背中を見つけ、土手へ降りていく。



「けーいぶっ!」
「おぉ、みゆき君か。
 いつも青子が世話になって・・・・・・」
「いやいや、世話されてるのは僕の方ですよ」



ニコリと笑みを浮かべ、隣に座る。
普段はしない、女の子らしい座り方をし、ニコニコと笑みを浮かべた。



「それより、どうしたんです?
 こんなところで油売ってていいんですか?
 来日されたアン王女が、キッドとリオに挑戦状を叩き付けたらしいじゃないですか」



そう言って中森警部を見れば、苦笑とも取れる顔でこちらを見上げた。



「キミは、奴に関する事なら何でも分かるんだな」
「キッド専属の探偵ですから。
 事件よりもまずキッド!
 なーんて、警部に憧れてるだけなんですけどね」



そう言って中森警部を見るが、警部は俯いてポツリポツリと語りだした。



「自分が情けないんだ、このまま怪盗キッドとリオが来るのを黙って見過ごすのかと思うと。
 憧れてる、って言ってくれてるみゆき君にこんな姿を晒すのは、あんまりしたくないんだがね」
「いやいやいや!
 僕が尊敬するのは盗一さんと親、それと警部ですよ。
 優作さんたちも尊敬してますけど、僕には警部さんが凄いと思いますよ?
 何でも一途になれるのはいい事ですから!」



そう言って、ふふっ、と笑みを浮かべる。
そうだ、と警部は顔を上げた。



「一つ、手品をしてくれないか!」
「え、手品をですか?」
「あぁ。
 青子にいつも言われてるんだ。
 “祐樹君や快斗君の手品は凄い”、と。
 祐樹君はみゆき君だからね。
 それに、一番弟子のキミたちは本当に凄いと思うよ」
「いやぁ、僕は黒羽程じゃないですよ。
 でも、警部がどうしてもって言うなら!」



座り方を変え、ショルダーバッグからカードを取り出す。



「種も仕掛けも、ございません!」



そう言って表裏を見せたトランプの束。
食い入るように見つめる中森警部に笑みを浮かべ、トランプを消し去って見せた。



「き、消えた!」
「あーら不思、議っ」



そう言って煙幕と共にトランプを出す。
驚く警部に、ふふっ、と笑みを浮かべ、でも、と呟く。



「こうやって左手に注意を引き付け、右手に次の種を仕掛ける。
 相手に悟られないように、素早く!
 マジシャンの基本です」



ニコリ、と笑みを浮かべ、じゃーん、と布をひらひらさせた。



「three・・・two・・・・・・one!」



  ポンッ


軽快な音と共に布を取ると、快斗がその後ろに立ち、驚いた顔をしていた。



「か、快斗君!?」
「やぁ、黒羽。
 僕がこの格好なのは気にしないでね?」
「お、おう・・・・・・
 二人して、どうしたんだ?」
「警部を元気付けに来た!」
「手品を見せてもらってな。
 さすが、一番弟子は違うな、と」
「ん、何やったの?」
「今のと、ちょっとしたカードマジックをね。
 あ、いろいろぐっちゃぐちゃだから片付け任せたよ」
「お、おう」



手を振って見送れば、ふふ、と笑みを浮かべる。



「そう言えば、彼らもマジシャンでしたっけ。
 ・・・・・・警部、僕らと一緒にパーティに行きませんか?」



そう言ってふわりと立ち上がる。
ニコリと笑みを浮かべた。



「わ、わしが、キミらマジシャンと?」
「そう。
 フォーマルだけど、いつもとちょっと違う感じの私服で。
 僕らマジシャンの付き人のフリをして行けば、付き人です、と誤魔化せられますし」



そう言ってひらひらと揺れるロングスカートを少し持ち上げる。
ほら、と警部に手を差し出した。



「い、いいのか!?」
「えぇ!
 マジックが出来るなら、素人でも玄人でも歓迎、でしたよね?」



笑んで言うと、中森警部は目を輝かせ、みゆきの手を取った。











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