短編

□卒業
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卒業式が終わって、何だか帰る気になれなくていつもの帰り道を遠回りして帰る。
早すぎた3年間に思いを馳せる。
楽しかった思い出達がきらきらと胸に溶ける。
明日からもう通うことのないんだなって思うとすごく切なくて、誰かに会いたくて、気づいたら財前にメールをしていた。
今すぐ来てって、あの財前相手になんとも我儘な内容。
まあ来ないだろうと思い、大人しく帰ろうとしたら財前から電話が来た。














『なんすか急に。』

「え、?財前…?」

『他に誰や言うんすか』

「せ、せやな、ごめん。」

『…で?』

「え?」

『で、なんすか』












まさかの財前からの電話に驚いて、私から連絡したのを忘れていた。
それにこれが財前との初めての電話だからなおさらだ。













『先輩ー、?』

「あ、ごめん!」

『ほんまなんなんすか。切りますよ。』

「待って!まだ切らんで!」

『…はいはい。』

「あの、」

『おん。』

「ちょっと寂しいんで今から会いたい、です。」

『ふーん。』

「いや、財前が嫌やったら別にええんやで!よかったらどうかなーって!」














自分からあんな大胆なメールを送ったくせに、ついつい照れて弱気になってしまう私の嫌なところ。いわゆるヘタレってやつだ。
財前はきっと迷惑だよねって思いながらもう本当に帰ろうと心に決めたとき、受話器越しでも分かるくらいの呆れた声で、今どこですかって聞いてくれた。
すぐに行くから待ってろ。って、思いもしなかった言葉に驚にを隠しきれない。
嬉しくて嬉しくて、ついついにやけてしまう。
財前とは、もう学校というつながりが無くなったらこのまま関わることは無いと思っていた。
だから余計に嬉しい。















「おい。」














聞き慣れた声に振り返ると財前が居た。

ああ、この人は本当に来てくれたんだ。
それも私の為に。














「私、卒業しちゃった。」

「知ってます。」

「おん。…………寂しい?」

「別に。」















相変わらずつれないなーなんて考えながら財前の綺麗な横顔をこっそり眺める。
ほんと、綺麗な顔。















「先輩。」

「んー?」

「卒業おめでとうございます、」














彼の照れ臭そうな横顔がたまらなく愛おしい。

ああ、幸せだ。



















卒業

貴方に恋した2年間。














2013.03.08 卒業おめでとうございます!

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