短編

□今日の主役は君。
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「なぁ。」

「はい?」

「なぁて。」

「え、だから何て。」
















ちゃんと返事をしてるのに何度も呼びかけてくる。
のくせに肝心の内容を言わずになんで分からないんだとでも言いたげな顔をしてらっしゃる。
















「なぁ、」

「だから何さっきから。」

「ほんまなんの事がわからんのですか。」

「分かりませんわそんなもん。」

「先週先輩と話しましたやん。ほんで先輩覚えとくーて。」

















先週?先週何か財前と話したっけ?はて?まったく思い出せない。
ぐるぐる思考を回らせる。先週、先週、先週………
ぱっと一つの会話を思い出した。
それでどうしてこんなに機嫌が悪いのかがわかった。
すっきりした!というか私何も準備してない。しまった。

















「財前、今日誕生日やんな、?」


















ぱっと顔が明るくなるのが明らかにわかった。
やっぱこいつも涼しい顔しときながらガキなんだな。可愛いとこもあるんだな。
うんうん。頭の中でいろいろ考えていれば財前がじ、とこちらを見てる。

















「で、先輩。」

「はい。」

「あれは。」

「あ、ああ、お誕生日おめでとう財前!」

「やなくて、」

















はぁ、とため息一つ吐いてプレゼントは?と一言。
やはり。
何も用意してなかったなんて言ったら財前怒るかな?
恐る恐る口にする。


















「あんな、財前、」

「プレゼント用意してないなんて言わせませんからね?」

「うっ、」


















先手をつかれてしまった。
財前からの期待の眼差しが痛い。
どうしようどうしよう。
ポケット探ってみたら財前が飴ちゃんとかやったらほんま許しませんよって圧力かけられた。
末恐ろしい男め。


















「先輩先週すごいええもんくれる言うてましたけどね。」

「そ、それ財前の気のせいちゃうの?」

「ええもんてなんやろなー?」

「ご、ごめんて!今日帰り何か買い行こ!な!」

「嫌っす。」



















い、嫌!?
プレゼント一緒に選べるから好きなもの選びたい放題なのに!?
財前はなにか楽しそうに笑ってる。
よく分からないけど。

















「俺、プレゼント先輩でもええっすよ。」

「え!!!?????」

「うっさ、」

「え、ちょ、ま、え???」

「せやから誕生日のプレゼントが先輩でもええって言うてるんす。」

















そう言いながらも詰め寄ってくる財前。
突然の出来事に何もできずに棒立ち。
そんな私を気にもせずにどんどんどんどん距離を詰めてくる。
待って待って待って待って!!!
はっとして財前を押す。
ところが押した手を掴まれて引き寄せられる。
でも負けじとばかりに暴れてみたけどすんなりと抑え込まれてしまった。
これが普段から運動してるしてないの差…。というか男女の力差という奴だろう。全くもって動けない。びくともしない。
いよいよまずくなってきた。


















「ざ、財前、?」

「ええっすよね。プレゼント忘れた仕返しも兼ねてってことで。」

「え、ちょ、ごめんて財前!」

「はいはい大人しくしとれば何も怖いことしませんて。」




















ぐいっと顔を近づけてくる財前。
ちょっと待って本当待って!
財前を押してもやっぱりびくともしない。
怖いことしないってもうすでに怖いんですけど!?
私のファーストキスはもっとステキなシチュエーションでするって決めてたのに!
唇がくっつくまであと数センチ。
あ、だめだ。諦めよう。これも運命なんだ。
すっと目をつぶって覚悟を決めたけどなかなか唇がくっつかない。
あれって思って目を開けると楽しそうに笑ってる財前。


















「はは、間抜けな顔。」

「え、な、え???」

「あほか。何その気になっとるんすか。第一顔にそんな力込めたら唇硬くて何も楽しないわ。」



















そう言って唇を人差し指でツンとつつく。
何だそれ!
一気に顔が熱くなる。触られた唇も。
その気になんてなってないしそもそもしかけてきたのはそっちじゃないか。
恥ずかしいんだがむかつくんだかでなんだがすごくもやもやする。
もやもやの原因である財前をとりあえず殴る。
それでもびくともせずに何でも無いように笑ってる財前に腹が立つ。


















「っ、お前なぁ!」

「はいはいからかってすんませんした。じゃ、放課後の買い物楽しみにしとりますんで。」

















ひらひらと手を振りながら去ってく財前。
思わず見惚れてしまった自分に気付いてはっとする。
違う違うさっきあんなことになったからであって別にそういうのじゃない。そう自分に言い聞かせる。
気を紛らす為に、さっきまで何もなかったように財前に何時もの様にメールをした。
放課後ちゃんと来いよって。
あと誕生日おめでとうって。
そのメールを見た財前が楽しそうに笑っていたのも知らずに。





























今日の主役は君。










2014.07.21 1日遅れてしまった、財前に転がさせる先輩。
今回名前変換無しですみません、、、

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