小話

□やさしく舞い散る雪の華
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ふわり、ふわり
雪が舞っている

君はいつも雪が降るたびに
凍える体をそっと
躊躇いがちに抱きしめてくれた

それが酷く心地よくて
いつの日からか
ずっとその温もりを感じていたいと思うようになった
だけどその温もりも今日だけは……


「雪か…」

窓から外を覗くと雪が降っているのが見えた。
いつもなら何とも思わないものなのだが。
これからしばらくの間居なくなる人の事を思うと、ほんの少しだけ忌々しく感じられる。

「雪、ですか?」

ふと後ろから声がしたので振り向くと。
嬉しそうに微笑みながらその人は駆け寄って来た。

「ああ。もう支度はできたのだな、趙雲」
「ええ」

君は遠い所へ向かってしまう。
戦の為に。
そう考えると少し胸が苦しくなった
それなのに君は。

「今夜は冷えそうなので、風邪を引かないように気を付けてくださいね」

などと自分の事はお構いなしというように私の心配をする。
こんな時じゃなければ堪らなく愛しいと思えるのに。

「心配無用だ」
「そうですか、それなら私も安心です」

今は君の優しさが
その気遣いが
……辛い。
趙雲に目を合わせるのが苦しくなり、気を紛らわそうと空を眺めた。

このまま時間など止まってしまえば良い。
どこかそんな事を考えている自分が居て余計に空しくなった。
嫌でもその時はやって来るのだから。

そっと趙雲の方を伺うと彼は困ったように笑っていた。
そして私の一番聞きたくない言葉を紡ごうとする。

「周瑜殿、もう」
「行くのか?」
「…はい」

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