小話

□愛しさの欠片
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「…ねぇ。あたしの顔に何かついてる?」

先刻からずっと此方に視線を送ってくる三成に、ねねは不思議そうに首を傾げた。
普段なら目も合わせようとしないのに珍しい。

これはもしや、自分の顔に何かついてるのか。
そう思い尋ねてみたものだが。

「…別に」

返って来たのはその一言のみ。
ねねは呆れた様に溜め息を吐いた。

「変な子だね」
「……分かりませんか?」
「何が?」

再び首を傾げるねねに。
三成は内心苦笑したい気持ちになりながらねねの腕をそっと掴んだ。
そして徐に引き寄せ耳元に口を寄せる。


「三成?」
「       」

ぽそりと何かを囁いて。
三成はねねを放すとすたすたと歩いて行った。
残されたねねは一瞬ぽかんと呆けた表情で固まる。

が、見る見るうちに顔が真っ赤になり
「三成の馬鹿っ!!」
と叫ぶのだった。

遠くから聞こえるその声に、三成はほんの少し頬を緩ませる。
……今しばらくは笑みがこぼれるのを耐えられそうになかった。


愛しさの欠片

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