小話

□好きなのに届かなくて
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※微

―――自分だけが好きなんじゃないかって思う時がたまにある。
俺からシルバーに告白して付き合うようになってから、もう何カ月も経つけど。
一度も体の関係を持ったことは無かった。
それどころかキス…さえも。

するチャンスは今までにいくらだってあった。
けどしようとすれば、あいつが泣きそうな顔で拒否するから無理強いはできなかった。

決してあいつの体だけが目当てとかそういう訳では無い。
けれど俺だって男だ。
好きなやつとしたいと思ってしまうのは当然の気持ちだった。


だからどうしてもシルバーの気持ちを確かめたくて、俺は放課後誰も居ない教室にシルバーを呼び出した。
そう、シルバーがほんとは俺のことをどう思ってるのか知るために。
…最初はそのつもりだった。

「…何の用だ」

うっすらと夕陽が差し込む薄暗い教室の中。
窓を背にシルバーは、どこか落ち着かない様子で言った。
ほんの僅かだが声が震えているのを俺は見逃したりしない。

こいつが俺と二人きりになるのを嫌がるのはいつものことだ。
二人きりになると俺が何をし出すか分からないからだろう。
…所詮、俺はそういう風に見られてるってこった。

「たまには良いだろ、二人っきりっつーのも」
「…そんなの、俺はごめんだ」

用が無いなら帰る。
そう言ってシルバーは俺と目を合わせないようにして、横を通り過ぎようとした。
けどそんなことを許す訳無く。
俺はシルバーの腕を強く掴み、阻んだ。
すると、きっと銀色の瞳を光らせ睨み上げてくる。

「放せ」
「やだね」

こんな状況で、放せと言われて「はい、そーですか」って放す馬鹿がどこに居る?
ただシルバーの気持ちが知りたいだけなのに、逃げようとするこいつに苛立った。

「…お前さ、俺のこと嫌いだろ?」
「え…?」
「今まで…本当は嫌々俺と付き合ってたんじゃねぇの?」

俺の言葉にシルバーは驚いたように目を見開いた。
そしてすぐにふるふると首を横に振って
「そんなことない」と呟く。

さっきとは打って変わり、今にも泣きそうな表情だ。
何故だか分からないけど、その表情に益々苛立ちが募った。
…ああ、何だかすげぇ腹が立つ。

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