小話

□タイヨウのうた
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※現パロ
大学生銀と高校生金


人通りの多い路上でだった。
ふと聴こえてきた歌声に足を止めたのは。
誰もがせわしく歩いている中。
その雰囲気に似つかわしくない柔らかい声音でやつは歌っていた。
…いわゆる路上ライブというものだろうか。

通行人は皆、彼の存在など無いかのように通り過ぎ…誰も立ち止まって聴こうという人は居ない。
時折冷たい目線をそいつに投げかけるだけだ。

俺もその中の一人になるはずだった。
けれど俺はそいつの前で思わず立ち止まってしまった。
…何故かは分からない。
そいつの歌が耳を引くくらいに上手いから…というわけでは無い。
音楽に関して疎い俺でも分かるほどに、そいつの歌は下手くそだった。
けれど、不思議と耳障りな感じはしない。
…少し聴いていきたいと思ってしまったのだ。

「…」

そいつは一瞬だけ驚いた顔で俺を見上げ、またギターの方に集中して歌った。
…やはりこの場には似つかわしくない歌声だと思った。

もっと別の…そう例えば真昼間の公園とかで歌えば、子供がたくさん寄って来るのではと思うくらいに明るくて柔らかい…。
とにかくこんな所で歌うには勿体無いのではないかと思えた。


(良い声だな)
しばらくこの声を聴いていたくて、俺は目を閉じて歌に聴き入った。


そして少しだけ聴くつもりだったのが、結局最後まで聴くこととなる。

歌い終わった後、そいつはぱっと明るい笑顔を浮かべて俺を見上げた。

「…あんたが初めてだ、わざわざ立ち止まって聴いてくれたの」
「……だろうな」

こんな下手じゃ誰も…。
口に出しかけた言葉を慌てて呑み込む。
しかしこいつは気にも留めない様子でにこにこと笑っていた。

「お姉さん、良い人だな」
「は…?」
「こんな綺麗な人が聴いてくれたなんて俺、幸せかも」
「…俺は男だが」
「え、嘘…マジで!?」

こいつ馬鹿か?
初対面のやつに失礼かもしれないが、そんなことを思ってしまった。
どうすれば俺が女に見えると言うんだ?

「…うーん、ボーイッシュな女の人だと思ったんだけどな」

いや、残念。
そう言ってやつは苦笑した。

…変なやつ。


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