小話

□おかえり
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『ゴールドが今日、シロガネ山から帰ってくるらしいわ』

クリスからそんな電話がかかってきた。
ちょうど五時間ほど前のことだ。

その内容は…
ゴールドから3ヶ月ぶりにこちらに帰ってくると電話が入った。
13時にコガネシティの近くにある自然公園で、三人で落ち合おう…とのことだった。

その後の予定についてはよく分からないが、どうやらゴールドの家にお邪魔することになるらしい。


…提案者が提案者だけに、正直俺は不安を感じていたが。

果たしてその不安は的中するもので。
13時に待ち合わせのところを大幅に遅れて、14時を過ぎたところでそいつは現れた。

「いやぁ遅れちまった、悪い悪い」

でも主役は遅れてやって来るもんだからな、よくあるこった。
などとふざけたことを抜かしながら、ゴールドはにっと笑った。

その両手には大量の紙袋が提げられている。

どの紙袋にも『チョウジ名物 いかり饅頭』と書かれていた。
それを見たクリスは今まで抑えていた怒りを露わにする。
(ゴールドを待っている間俺は、黙ったままポケギアを睨み付ける彼女を目の当たりにしていたのだ)

「…っあなた、遅いと思ったら寄り道してたのね!?」
「寄り道じゃねぇよ。手ぶらで会うのも悪いからさ、お土産買おうと思ってたのよ」

これ見よがしにゴールドは紙袋をゆすりながら言った。

嘘付け。
言葉には出さないが俺は心の中で呟く。

悪びれた様子を一切見せないゴールドに、クリスの怒りのボルテージはますます上がっている…様な気がした。

「あなたねぇ…」
「反省してるって。せっかく久しぶりに会ったんだから説教は無しにしようぜ?」
「またそんなこと言って」
「俺、クリス達に会えてすっげぇ嬉しいんだ」

何たって3ヶ月ぶりだぜ!
そう無邪気に笑って言うゴールドに、クリスは「しょうがないわね…」と心底呆れたように溜め息を吐いた。

さっきまでの怒りはどこへやら。
心なしか嬉しそうな表情をしている。

…なるほど。
どうやらゴールドは、いつの間にかクリスの扱いを心得たらしい。


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