小話

□まるいほしぞらに、ねがいひとつ
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夢を見ていた。
昔の…まだ僕が子供の頃の。
サトシと手を繋いで森を歩いた夢を。
あの時、一緒に見た綺麗な星空。
…君は今でも覚えているだろうか。
――――――


『見ろよ、シゲル!星がたくさん出てるぜ!!』

『あんまりはしゃぐなって。君は本当に子供だな』

深夜を過ぎた頃。
サトシに手を引かれながら、僕はトキワの森までやって来ていた。

“星を見に行こうぜ”

そう言ってサトシが研究所に来たのが30分くらい前。
久しぶりに見た幼なじみの姿に僕は驚いた。

『…サトシ、帰って来ていたのか…!』
『ああ。久しぶりだな、シゲル』
『いつここに?』
『今日の朝』
『どうして連絡くれなかったんだよ』


一言くらい連絡いれてくれたって良かったんじゃないかと思う。
そりゃあ正直言ってサトシはそういうことに関して全く几帳面じゃない。
それでもこっちに帰って来る時には必ず連絡してくれていた。
へらへらと笑うサトシに、ありったけの文句を言ってやりたいと思ったが。

嬉しそうな顔で『シゲルを驚かせたかったんだ』と言われ、一気にそんな気持ちは無くなった。

『…本当にしょうがないやつだな、君は。………お帰りなさい』
『へへ、ただいま』

そんなやり取りをして僕らは再会を喜び合った。


―――そして今。
手を引かれるままに森の中を奥へ奥へと進んでいる。

…正直言うと夜の森は何が出てくるか分からないから、あまり好きではなかった。
けれどサトシと一緒なら不思議と恐怖は湧いてこない。

目の前のサトシの背中が大きく……頼もしく見えた。
昔はもっと小さかったのに、いつの間にこんなに大きくなったんだろう。


…随分と長いこと会ってなかったんだということを思い知らされた気がした。


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