小話

□月は静かに太陽を蝕む
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ごくたまに、だが。
無性に滅茶苦茶にしてやりたくなる時がある。

乱れさせて
狂わせて
何もかも全て奪って…



「…それって俺のこと殺したいってことか?」

気持ち良さげにシーツの中で丸まりながら(まるで猫みたいだ)
ゴールドは不思議そうな顔をして首を傾げた。

「…いや」

殺したい、のとは少し違う気がする。
何て言うのか……。


「…壊したいだけだ」

そう言うと。

ゴールドは大袈裟なくらいに大笑いした。
…何がおかしいのか俺には分からない。

きっと睨み付けてやると、奴は悪い悪いと言って急に真面目くさった表情をした。
こいつにしては珍しい。


「…俺さ」

「…何だ」

「やっぱり、お前のこと好きだわ」


…いきなり何を言うのかと思えば。


「…俺も……嫌いではない」

「何だよそれ」


普通そこは“俺も好き”って言うところだろ?

けらけらと笑って言うゴールドが何だか可愛く思えて。
俺はそっと頬に口付けた。
そのぎこちないキスに奴はまた笑う。

「くすぐってぇ」
「我慢しろ」


……きっと、ゴールドは俺が言ったことを面白い冗談としか思っていないのだろう。
お前は何も知らない。

お前の笑顔が俺をこんな醜い気持ちにさせるということを。



何の汚れも知らないその笑顔がただ愛しい
(だから、それ故に壊したくなる)



分からないならそれで良い。
今は……。

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