小話

□狂宵月
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※微妙に電波


欲情した、とでも言えば良いのだろうか。
それとも首元に点々と散らばる赤に誘われた…とか。

何となく…。
何となくだが。

隣で眠るゴールドの首にそっと手をかけてぐっと力を込めてみた。

すると目を覚ました奴は、驚いた顔で俺を見つめてくる。

「シルバー…?」

普段強気な金色の瞳は、僅かだが恐怖の色を含んでいて。

ああ、何故だろうか。
…すごくぞくぞくする。

体を繋げている時よりも俺は興奮していた。

もっとゴールドの乱れる姿が見てみたい。
その表情を苦痛に歪ませたい。

思いは凶器と変わり。
加減など知らぬかのように首を絞める力を強めると、ゴールドは苦しげな声を漏らした。


「…っぁ…ぐっ…」


喘ぐようなその声に、セックスをしているかのような感覚を起こさせる。

体が、歓喜にうち震えた。


「その声、もっと聞かせろ…」

更に力を加えてやった。

このままだと…死ぬかもしれない。
頭の片隅でそう思いながらも、力を緩めようとは思わなかった。



――やがてどれほどの時間が経っただろうか。

いや実際はあまり経ってないのかもしれない。

突如としてゴールドは俺の腕を掴んで、つと口角を上げて笑った。
その表情に気を取られ、俺の手の力は弱まる。

「ゴールド…」

「…っは、…はは」


乱れた息を整えることもせず、ゴールドは笑った。
声が酷く掠れている。

「何がおかしい?」

そう尋ねると、ゴールドは金の瞳を鋭く光らせ俺を見つめてきた。
心底嬉しそうに笑いながら。
いつもの無邪気な笑顔ではなく、嘲りを含んだ笑み…。

「お前最高だよ」

「何が」

「…俺を殺そうとするなんてよ」

「…別に。殺そうとしたつもりなど無い」

「嘘付けよ」

目が本気だったぜ?
肉に餓えた捕食者のように瞳をぎらつかせゴールドは呟いた。

全く鋭さを失わないそれを見て俺は知らず寒気を覚える。
何だ、その余裕は。
さっきまで苦痛に顔を歪ませていたお前はどこにいった?
ごくりと喉が鳴る。


「…なぁ、シルバー」

「……何だ?」

「お前の好きにしても良いぜ」

「…は?」

「お前になら殺されたって良いって言ってんだよ」

そう呟いて、ゴールドは俺の首へと手を伸ばしてきた。
絡み付くようなその動きに、払い除けたいと思うが体が動かない。

…金の瞳に捕らわれる。


「…もう一回やってみろよ、なぁ。俺もお前を殺してやるからさ」


紡ぎ出される言葉とは裏腹に。
奴はいつもの無邪気な笑顔を浮かべた。

…何故だか分からないが、俺もそれにつられて笑ってしまう。
喉の奥から笑いが込み上げてきて仕方がなかった。




「…良いだろう、やってやる」



嗚呼、きっと狂ってるのは俺だけじゃなく お前も…
(ならばいっそのこと、このまま共に壊れてしまおうか…?)
.
 

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