小話
□七夕と称した夏祭り話
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“今日さ、学校の近くの神社で夏祭りがあるんだ”
“一人で行くのもつまんねぇし…一緒に行かねぇ?”
“祭りは7時に始まるからよ、6時半に鳥居の近くで待ち合わせな!”
そうやってシルバーと約束を取り付けたのは放課後のことだ。
本日7月7日。七夕の日。
ただ今の時間、7時10分…。
「あいつ…遅ぇな」
たくさんの人が通り過ぎて行く中。
俺は鳥居の下の石段に腰掛けて、一人シルバーを待ちぼうけていた。
さっきから時計を見ては溜め息を吐き、通り過ぎる人を見ては溜め息を吐きの繰り返しで。
たまに人ごみの中を目を凝らしてあいつの姿を探してみるが見当たらなかった。
あいつ、今まで待ち合わせとかで遅れたこと無かったよな…。
そう。いつも遅れるのは俺の方で、シルバーをよく怒らせていた。
それが今日は逆だ。
ほんの少しだけ不安になる。
何だか時間だけが空しく過ぎていくような気がした。
「……」
…そういやあいつ、夏祭り行ったこと無いって言ってたっけ。
ふっと、放課後のことが頭に思い浮かんだ。
俺が夏祭りの話をしてた時、ずっと興味津々な顔をしていたのをよく覚えている。
悪くないなって静かに笑っていた…。
「……絶対来るよな」
そう呟いて、顔を上げた時。
不意に、人ごみの中をよたよたと歩くギャルが目に入った。
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