小話
□本日も快晴なり。
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『今日一日の天気は快晴。雲一つ無い空となるでしょう』
数十分前のことだった。
まだ自分が家に居て、ニュースの天気予報でそんなことを耳にしたのは。
雲一つ無い空。
テレビ画面に映るアナウンサーは眠そうな顔をしながらも確かにそう言っていた。
やたら快晴という言葉と太陽のマークを強調していたから、よく印象に残っている。
…何故数十分前のことを今こうして思い出しているかというと理由は至って簡単。
今正に雨に降られながら学校へ向かっているからだ。
本日も快晴なり。
「…思いっきり降ってんじゃねぇかよ」
降りしきる雨の中。
鞄を傘代わりにして走りながら、俺は恨みがましく呟いた。
しかしそんな言葉も雨の音の前に、呆気無くかき消される。
…天気予報も存外当てにならないものだと思う。
確かに家を出たばかりは文字通り雲一つ無い空だった。
しかしそれも長くはもたず、何分かすれば黒い雨雲に覆われ雨が降り出すという始末だ。
俺は雨があまり好きではない。
はっきり言って嫌いだ。
何よりも濡れるということが嫌だった。
セットした髪が崩れるからという単純な理由で。
現に寝坊しつつも気合い入れてセットした髪は雨の所為でとうに崩れている。
ついてないと思った。
きっと学校でダチ共に馬鹿にされるに決まっている。
そう思うと何だか学校に行くのが億劫になった。
そうだ、わざわざ濡れ鼠になってまで行くこと無いじゃないか。
どこかで雨宿りして雨が止んでから行けば良い。
どちらにしろ遅刻は確定なんだから。
そんな甘い考えに取って代わる。
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