小説(長編)
□第3章 姉さんと『帝国』
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「……私、言ったわよね? 今の時間の10分前には戻って来て、って……」
彼女はまだにこやかな笑みをリオンに向けている。しかし、声には確実に棘がある……。
「いや……、その……これには深い理由ガアリマシテデスネ……」
リオンは冷や汗をダラダラと流しながらそれに答える。
だが、目は完全に泳ぎ、言葉はカタコトになっている。
「……リオン」
彼女の目つきがキッ、見開かれてキツイものに変わった。
まるで、獲物を狙う鷹のような目でリオンを見る。
「ヒッ……!」
「……覚悟は勿論出来てるんでしょうね……?」
彼女は額に青筋を浮かばせてリオンを睨み付け、手をボキボキと鳴らし今にも戦闘体勢に入らんとしていた。
「ヒー!! ごめんなさい、スイマセン、お許しくださいませソプラお姉様ー!!」
「……『ソプラお姉様』? ……って事は……この人リオン君のお姉さんなの?」
天音は不思議そうな顔で2人を見る。そして、気付く。
――この人……夢に出てきた人だ……。