小説(長編)
□第3章 姉さんと『帝国』
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しばらく走ると大きく綺麗な城が天音の目に入って来た。
その城の周りには草原が広がっていて、丘の下を見下ろすと沢山の家や木々が見えた。
それは、天音のいた世界とは全く違う光景……。
「……凄い」
圧巻だった。天音は思わず立ち止まってそう一言だけ呟いた。
「……っ、天音、早く来い!」
「あ、うん!」
リオンに急かされ、天音は現実に引き戻されてまた走り出した。
お城に向かって走っていると、その城門の前に女の人の人影が見えてきた。髪は肩くらいの長さの金髪だが、よく見ると後ろで長い髪を2つの三つ編みにしている。
――お城の人なのかな……? でも、何処かで見たことがある気がする……。
天音がそう思っていると、前を走っていた筈のリオンが急に立ち止まった。
よく見るとリオンの顔は青ざめていて、若干冷や汗をかいているような気もする……。
「……あら、リオン。遅かったわね」
リオンに気付いた女性は恐ろしいほど綺麗に笑いながらリオンに声をかけた。
俗に言うこれが『氷の微笑』というやつなのだろうか、と天音は頭の隅で考える。