□拍手お礼2
1ページ/1ページ

彼女らは自分の友人ではない。

まず、ひとりが友人とは言い切れない…知人。
友人と呼ぶには余りにも離れた関係。
知人と呼ぶには余りにも、内面を知られ過ぎた関係。

まず、彼女との関係がそんな微妙な間柄だというのに、彼女の親友にまでどのような関係を結べば良いのやら。
パソコンの電源を落として、匪口結也はぼんやりと頬杖をついた。
ややあって、ガタンと立ち上がると、何か吹っ切ったように口を開いた。
「引き篭もってたって、仕方ないか」
呟いて、彼は家を出た。


見慣れた街並み、ただ行き交うだけの人間。
そんな物をぼんやりと眺めながら、彼はノートパソコンを開いた。
あの事件の後…何をするでもなく、ぼんやりと過ごす時間が増えている事に気付いてはいる。
だが、笛吹も筑紫も今はのんびりさせてくれるつもりなのか、礼儀作法のDVDを延々見せられた以外は、最近は静かなものだ。
氷の解けたグラスを見て、ディスプレイに視線を移そうとしたその僅かな間隙に脳裏に焼き付くのは、何時だったか見かけたことのある、少女。
いや、少女と呼ぶには大人びて…悪く言えば、スレているような気がしないでもない。
自分も大概人の事はいえないから、なるべく口には出さないようにしているが。

まさか、と思って頭を振りかけて、けれど此処が彼女たちの行動範囲の真っ只中である事を思い出して立ち上がった。
レジに必要以上の金を叩きつけて、店を飛び出す。
先程見た人影を探して、見つけるや否や、彼は駆け出した。

「おい!あんた!!」

腕を掴まれて振り返った彼女は、とてつもなく不機嫌な様子で、匪口を上から下まで眺めた。
「誰」
短い誰何。
「匪口さん?!」
すぐ隣から聴こえた叫びに、ようやく彼女たちがふたりで居たことに気付く。
「…桂木」
「なに、ヤコ知り合い?」
相変わらず不機嫌そうな彼女が、隣にいた友人に声をかける。
それもその筈だ。
彼女の腕は未だに匪口に掴まれたままなのだから。
「え、うん。刑事さん…」
その言葉に、彼女の瞳が怪訝そうに匪口に向けられた。
整った顔立ち。
自分を見せるメイク。
意志の強そうな目許に、頭の中が沸騰しそうだ。
「どー見ても、歳あんま変わらなさそうなんだけど?」
「あー…うん、匪口さんは特別だし」
「ふぅん」
全く興味無さそうにそう呟くと、彼女―籠原叶絵は掴まれていた腕を乱暴に振り払った。
「ムカついた。帰る」
「え?ちょっと、叶絵…っ!!」
さっさと踵を返して歩いてゆく友人を追いかけようとして、しかしそれは不発に終わる。
今度は彼女が匪口に拘束される番だ。
「匪口さん、どうしたんですか?!」
腕を掴まれたまま彼を振り返り、困ったように見上げれば、彼はこちらを見ていなかった。
視線を追えば、なるほど、親友の背中に釘付けだ。

「…もしかして、叶絵の事」
「…今フリー?」
「だと思いますけど。匪口さんは…」

彼女の好みとはズレている。
そう言おうとして、止めた。
よく考えたら、彼は一応警察に籍を置く身で。
ある意味美味しいポジションかもしれない―あくまで親友にとって。

「ん?なんだよ、気持ち悪いな、言いかけたなら最後まで…」
「私はっ、応援しますからねっ!!」

力いっぱい告げれば、匪口は一瞬身を引いて、「ああ」と弱く答える。
何故そんなに協力的なのかは全く理解できなかったが、別に嫌がる理由も無かったので頷いておく。

そうして、彼は最初の一歩を踏み出した。

「でさ、桂木。取り敢えず彼女の名前教えてくんない?」


*****
もう不毛だっていいじゃない!!(え)
拍手お礼だけど、むしゃさんのために書きました!(一度反省して来い)
20071101

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ