□unlimited lover
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別にどっちでも良かった。

なんて、言ったら多分殺される。
解ってるから口にしない。
「なにニヤついてんのよ、気持ち悪い」
身に着けるのは、情事の残り香。
頬に張り付いた髪を鬱陶しそうに払いながら、彼女はベッドを降りる。
「別に…?籠原叶絵がここに居るのが嬉しいだけ」
にっこり笑うのは、それが彼女の嫌悪する態度だから。
「ほんっと、ムカつく男よねあんた」
嫌そうな表情を隠しもせずに、バスルームへ消えてゆく背中を見送って、ベッドへ腰掛ける。
軋んだスプリングが、小さな音を立てた。
「どっちでも良かった、なんて、嘘だけどさぁ」
本当は、彼女の視界を自分で埋め尽くしたかった。
どう転んでも正攻法では落とせなかったから、裏技を使っただけだ。

ハッキングするのと同じように、気軽に。

けれど。

本心を吐き出すのと同じように、激痛を伴って。

「単純だよな。桂木を狙ってる…なんて、んなワケないじゃん」
そんな勇気、ある筈ない。
彼女の傍には、どうしたって敵わない相手が居るのだから。
指折り数えて、嗤ってみる。

名実共に、正式な相手だとか。
番犬よりも恐ろしい飼い主とか。
数え始めれば限がない。
なのに彼女は、そんな事さえ頭から抜け落ちたように簡単に網に掛った。
きっと、理性では計算していた筈だ。
恐らく今だって。

それなのに、感情が伴わないから理解出来ないまま堕ちて来た。
「オンナのユージョー?」
鼻先で笑って、ベッドに寝転がる。
「どっちかってーと、歪んだアイジョーだよな、アレは」

こうなってはどちらから誘ったのかなんて、無意味で。
ただ、親友に手を出す、という嘘の脅しに簡単に屈した彼女の事が、馬鹿で可愛いと思う。
そして、そんな間抜けな手法でしか彼女を落とせなかった自分は、純粋に愚かだと思う。

寝返りを打って、絶対に彼女の耳に届かないボリュームで、シーツに吐き出す。

「そんなの、どうでも良かったんだ。ただ、好きなだけなんだ」


素直な告白なんて、彼女に聴かせる事は一生無いと思うけれど。

***イイワケ
いいんですかこんなので!!(誰に問うている)
というわけで、匪口と叶絵はなんかいっつも寒々しい感じになります。笹弥子の反動ですかこれは。
というわけで、20000ヒットおめでとうございます!!むしゃさんへひっそり捧げますv
お持ち帰りも自由ですよー(いるのかこんなの…)

※unlimited
━ a. はてしのない,無限の; 無制限の; 不定の.
(C)三省堂Web Dictionary
どう考えたって『不定の』ですが。
定まらんなぁ、このふたり(笑)

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