文【ささやこ2】

□Homework
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「弥子ちゃん、何してんの?」
リビングで座り込んでテーブルの上に教科書広げてたら、帰ってきた笹塚さんが不思議そうに呟いた。
「なにって…宿題、です…」
「…の、割には全然進んでないみたいだけど」
スーツの上着をソファに投げて、ネクタイを緩めながらひょいと腰を折る。
上から覗き込まれて、泣きそうになった。
「だって、頭の中がぐちゃぐちゃなんです…」
気を抜いたら情けない声が出て、思わず唇を噛んだ。
なんで宿題如きで泣きを見ないといけないの!!
アレもコレも全て、事務所で宿題させてくれないネウロが悪い!!
ここで宿題なんかしてたら、笹塚さんとの時間がどんどん減っちゃうのに、それでもここでやるしかなくて。
提出期限の迫ってきたそれらを眺めて、溜息を吐き出した。
「珍しいな、弥子ちゃんが数学以外でそんな考え込むの」
言いながら、くしゃりと頭を撫でてくれる。
その手があんまり優しいから、シャーペンを放り投げてしまった。
「笹塚さん…っ!!」
隣に立ってた笹塚さんにしがみついたら、頭上から小さくうわ、と聞こえた。
でも、すぐに腕が伸びてきて、あやすように背中を撫でられる。
「何も、泣く事ないだろ…」
ちょっと苦笑混じりの声がとても心地良くて。
安心し切った私はぼろぼろ零れてくる涙を拭かずに、その胸元に鼻先を摺り寄せた。
ゆっくりと膝をついた笹塚さんの腕が、強く抱き締めてくれる。
「だって…っ、終わらなくて…っ、事務所でやろうとしたら、ネウロが…っ」

意気揚々と逆さ吊りにしてくれた。
頭に血が回ってないから駄目だとかなんとか呟いて。

「あー…それは…可哀想に」
何もかもを悟ったように呟かれて、情けなくて、更に泣けた。
笹塚さんは涙でシャツが濡れるのも気にせず、大丈夫大丈夫、なんて囁きながら、頭を撫で続けてくれる。
「んで?いつ提出なの」
耳元で小さな声が聞こえて、25日、と返したら、彼は妙な顔つきでどっかで聞いた日付だな、なんて。
意味の解らない言葉を洩らした。
「…25日、って…なにか、あるんですか?」
「……いや、多分気のせい…」
自分にも言い聞かせるみたいに、噛み締めるみたいに呟いて、笹塚さんがちょっと身体を離した。
「で、そんな頭ぐちゃぐちゃの時に考えたって、仕方ないだろ」
ちょっと笑って告げられて、うまく働かない思考で、それでもこくりと頷く。
冷えた指先が目許に触れて、まだ浮かんでた涙をぐいっと拭ってくれた。
「まだもう少し日があるんだから、ちょっと休みな。明日付き合うから」
「…っ、ほんと、ですか?」
「ほんと。だから、今日はもう寝な、弥子ちゃん」
言うが早いか、私が頷くより先に、くん、と腕が引っ張られて。
首を傾げようとした時には、抱き上げられていた。
「ささ、づかさ…?」
「どっちで寝たい?」
どっち、と訊かれて、思わず瞳を見開いた。
どういう意味、とか、尋ねる余裕もない。
「俺んとこ、来る?」
「……っ!!」
真っ赤になったのが自分でも解って、さっきから情けないトコばっかり見せてるけど、更に情けない表情で笹塚さんを見てしまう。
「…なんもしないって」
困ったように笑われて、穴を掘って埋まりたい衝動に駆られた。
「ぅ…でも、週末…」
「たまにはなんもしないで、一緒に寝るだけっていうのも俺は良いと思うけど」
額にキスを貰って、胸が締め付けられるような感覚を味わいながら、笹塚さんを見上げる。
「…キスは"なにかする"に入りますか?」
首を傾げて問い掛けたら、笹塚さんは一瞬だけ面食らったように表情を凍らせて。
でも、すぐに笑ってくれた。

私にだけくれる、甘い甘い、笑顔。

「あー…、今回はノーカウントで」
いつもは入るんだ、なんて。
笹塚さんの答えに笑って。


たくさんのキスを貰いながら、笹塚さんの部屋、笹塚さんのベッド、笹塚さんの腕の中で、私は意識を手放した。




ちなみに、宿題はちゃんと提出期限に間に合いました。
―って言ったらネウロに物凄く不愉快そうな表情をされた。
あのドS!!
絶対いつかリベンジしてやるんだから!!


***イイワケ
さりげなく最短記録更新してますが、無かった事にします。
というわけで、原稿頑張ってる方々に捧げる微妙な笹弥子!!(こんなん捧げるなよ…)
Fight!!

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